那須川天心が世界を実感

　足を使って、スピードでモロニーの攻撃を回避した那須川だが、初回、モロニーの右ショートを喰らって、膝を揺らされた。それでも、中盤以降は、距離をとって、素早く切り込んだタイミングで、左ボディアッパーと右でポイントを稼いだ。ダウンシーンには恵まれなかったが、最終回には、那須川がパンチをまとめるシーンもあった。判定3-0で那須川が、前世界王者から大きな金星を挙げた。

　試合後の会見で那須川は「みなさんの声援のおかげで良い試合になった。モロニー選手も今までになかった自分の可能性を引き出してくれて、ありがとうございました」と感謝を口にした。

　試合については「1ラウンドは取られたが、そこからは立て直し、途中から遊び心を持てたので、ポイントは取れていると思った。1、6ラウンドにパンチを貰った場面では、何が何でも倒れないという気持ちだった。ここにきてメイウェザー戦が活きた」と、記者の笑いを誘った。

　採点について聞かれた際には「僕は取っていると感じた。倒すだけがボクシングじゃないし、ジャッジは3人いるが、大事なのは試合の勝敗をジャッジに委ねないことだけど、僕はポイントを取ることが得意」と話し、また「距離を取り、足を使って相手を追い付かせないのがテーマだったが、打ち合いになり、初めての事で、『負けるか』と熱くなり、後半で押し返せて可能性が広がり、一人の男として成長できた。改善するところもあるが、自分のボクシングが完成しつつあり、打ち勝つ事もできたので、まだまだ伸び代がある。世界王者に通用すると自分では感じている」と、自身の成長と自信を口にした。

　粟生隆寛トレーナーは、「打ち合いは指示ではなく、本人の感覚でいったもの。面白い展開で良かったが、まだ荒いので、これから修正していきたい」と、国民的スターを労った。

　マロニーは試合後、「大きなチャンスをいただいたことを、トップランクと本田明彦会長に感謝したい。接戦だったと思うが、悔しい。日本のファンの皆さんの前で試合ができて嬉しい。天心とリマッチしたい。118lb12ラウンドでやれば、違う結果になると思う」と、バンタム級の世界のリングで再戦することを期待した。

　天心と対戦した印象を「いいファイターだ。ベストな相手だと思ったから試合を受けた。足を使われた時には苛立ったし、ミスもあったかもしれない。ベストは尽くしたが、結果は悔しい」と、バンタム級のトップ戦線に留まって、世界王座奪還を目指す覚悟を示した。

　武居由樹(28=大橋)が試合後にリングインしたのを見て、「試合をする可能性があるんだと思うが、自分がリマッチしたい。天心と武居は違うタイプの選手。どっちが勝つかわからないのが、ボクシングの美しいところ。2人をリスペクトしている」と述べ、「足を使ってきたので、距離を詰めれなかった。天心は速いが、走り回ってたのでやりにくかった。まだまだ学ぶ立場として、試合の映像を見直して戻ってきたい」

　天心のボディの攻撃に関して、「自分はボディが強いので、効かなかった。当てられたが、ダメージはなかった。自分の方がパンチを当てていたと思ったので、ポイントを取られたラウンドが多かったのが悔しい。もう少し、点差は小さかったと思う。点差が開いていたことには少し驚いた。98-92はアンフェアだとも思った」と、柔らかい口調で悔しさを滲ませた。

　ジェーソンとアンドリューのモロニーのマネージャーは、会見で、「とても目の肥えたファンとメディアがいる日本の皆さんに言いたい。モロニーが勝てていたという印象がある。採点を厳しく見ないといけない。ラウンド毎にどちらがポイントを取ったかよりも、どのように取ったかが大事。10対7や10対6にしろとは言わないが、ポイントを取れたと思ったラウンドも沢山あった。コミッションは、ジャッジの教育をするべきだ」と、やや強い口調で、採点の付け方に自身の考えを示した。