1フロアのスペースにサンドバッグが6基とパンチングボールが1基。夕方だったが、子どもから大人まで次々にジムに入ってきた。このジムは、初心者からプロ志望者まで幅広いレベルのボクサーを対象に育成に力を入れているという。
かつて、現WBC世界ライト級王者のシャクール・スティーブンソン(27=米)、世界2階級制覇王者デビン・ヘイニー(26=米)、元WBC・IBF世界ウェルター級王者のショーン・ポーター(米)もこのジムで練習していたと聞かされた。
ここで、あることに気がついた。このジムにはゴングがないのだ。ジュピターコーチに理由を聞いたところ、「このジムでは、選手を指導しているトレーナーがそれぞれタイマーを持ち、選手に知らせるんだ」と教えてくれた。
小さな女の子が縄跳びを飛んでいた。ガブリエルさんはアマチュアボクサーだった父の影響で10歳でボクシングを初めて、プロボクサーを目指している。「将来はスピードを活かした世界チャンピオンになるのが夢なの」と目を輝かせた。
ここには有名なプロ選手はいないが、このジムから明日の世界チャンピオンやオリンピック選手が出てくるかもしれないと想像すると胸が熱くなった。気がついたら、取材から1時間以上が経過していた。帰国するため、ラスベガス空港に向かう時間も迫ってきたので、挨拶して帰る際には、皆笑顔を向けてくれた。
<取材・構成・写真/やすおかだいご>