浪速のロッキー総監督就任秘話

　先月27日に復活した近大ボクシング部では、新・総監督に赤井英和氏の名もあって、様々なメディアからの大注目を集めた。「浪速のロッキー」の愛称で親しまれる赤井氏は、近大OBの元人気プロボクサーだが、現在も、関西を代表する俳優の一人。そうなれば、今回の就任劇は、表向きの「お飾り」との声も少なからずあるだろう。そこで、赤井氏と共に記者会見へ出席した新監督・浅井大貴氏に、「総監督就任」の真相を尋ねた。

　3年半前、現役部員が行った強盗事件を機に、即廃部を決めた近大ボクシング部。だが、残った部員はあきらめをつけきれず「自分たちが残ってるうちに」と、再起への情熱を持ち続けていた。
「学校へ行ったら、“今日から部はなくなった”って言われて茫然と立ち尽くしたのが忘れられないです」
　事件当時をそう振り返る福森雄太(近大4年)は、ノーマークから執念の全日本選手権ライトウェルター級優勝。部の価値をアピールした。
　しかし、この福森が来年3月に卒業してしまえば、現役の学生から元部員が消滅する。1学年上の浅井氏は「これが復帰を願う思い自体の消滅につながると思った」と、危機感を強めた――。
　最後の望みが、浅井氏にとって浪速高校時代の先輩にもあたる赤井英和氏だった。赤井氏は浅井氏の願いを最後まで聞き、浅井氏が自分自身の進路でも悩んでいるのを包み込むようにして言った。 「近大のためになりたいんやろ?お前の道もそこに拓けるはずや。頑張れ」
　赤井氏が数々の武勇伝をつくったと言われる新世界、通天閣前での一幕だった。

　それから赤井氏は、親交深い近大の上層部と話し合いを申し出るなど、リーダーのように動き始めた。そうした活動には、名城信男、石田順裕らプロボクシング界の世界王者となったOBも加わって、先月、部はついに復活。浅井氏曰く「赤井さんの尽力は、まさに最終ラウンドの逆転ラッシュだった」とのことだ。
「赤井さんは普段から“心で動く人”ですね。建前で話をされないんですよ。もちろんお忙しい人ですから、毎日練習へ来ることは難しいですけど、総監督就任は、決してお飾りやないことだけは、断言できます」(浅井氏)

　舞台裏でもイメージ通りの男気を見せた赤井氏。それを支える浅井氏は、選手も引退しておらず、監督兼選手という異色のスタイルも見せる。こちらも見どころの一つだ。