ターミネーターvs音速の拳は…

　24日、後楽園ホールで開催されたWBA世界ミニマム級タイトルマッチ、王者ポンサワン・ポープラムック(タイ)VS挑戦者・八重樫東(大橋)の12回戦。王者ポンサワンが"ターミネーター"の異名をリングで彷彿させた。
　序盤から挑戦者・八重樫が"音速の拳"を全開にし、ワンツー・左フック・左アッパーと高速回転のコンビネーションを浴びせるも、ポンサワンは"全然効いていない"と言わんばかりに「コイ!コイ!」と手招きし、圧力を掛け接近戦に誘い込む。
　八重樫は強打の右ストレート・左フックを打ち込まれるも、的確な右ストレートをポンサワンにヒットさせ、左ボディ・左フックを突き刺す。しかし8回、ポンサワンの右クロスに八重樫は大きく腰を沈ませてしまう。

　ここで八重樫は押し切られず、コンパクトな右ストレート・左フックで応戦、打撃戦の展開は互いの右ストレートが両者の顔面を捉える。しかし10回、八重樫の右ストレートに"ターミネーター"が遂にロープを背負う。ここから八重樫が一気のワンツー・左フックを浴びせ、"音速の拳"右ストレートが顔面を貫くと、レフェリーがポンサワンを抱き寄せる。10回2分30秒、八重樫が4年振り2度目の世界挑戦で、WBA世界ミニマム級王座戴冠に成功した!

　タイトル初防衛に失敗し、王座から陥落したポンサワンは控室で「負けたことは悲しい。まだできたしストップも早い」とレフェリングに納得いかない表情をするも、「ヤエガシは思った以上にタフでパンチも的確だった。とても良い試合をしてくれた。チャンスがあればまた世界を狙いたい」と新王者を称え、"ターミネーター"は早くも再起を誓った。

　一方、WBA世界ミニマム級新王者となった八重樫は、息子・圭太郎君の腰に最強の証を巻かせ、大橋会長と3人で喜びの会見となった。
　まず試合を振り返り八重樫は「1回の(足を使う)ボクシングを継続したかったが甘くなかった。5、6回につかまって打ち合いに巻き込まれた。だけど会長に"内側から打っていけ!"と言われ巻き返せた。会長の判断は間違っていなかった」と的確なアドバイスに助けられたと語ると、大橋会長は「面白い試合でしたね(笑)。だけど王者は噂通り"ターミネーター"だった。あれだけ打たれて顔色一つ変えなかった」とポンサワンのタフネスに驚きの表情。
　ここで8ラウンドの腰が落ちた場面を尋ねられ八重樫は「心が折れそうになった。だけど圭太郎の声が聞こえ、踏ん張ることができた(笑)」と圭太郎君の顔を見つめ、続けて「家族の力、ジムの力で今日は勝てた。そして岩手で初の世界チャンピオンになれた。少しでも岩手の人達に勇気を与えられたら嬉しい。でも王者の実感はまだない。今はゆっくり休みたい」と笑顔を見せる。

　師弟によるWBA世界同階級制覇に大橋会長は「次はWBCも獲り返してくれないと!これで井岡会長と世代を超えた"代理戦争"がスタートできる。ボクシング界を八重樫が盛り上げてくれ!」とWBC世界同級王者・井岡一翔(井岡)との"2団体統一戦構想"を明かした。
　最後に新王者・八重樫、圭太郎君、大橋会長と3人で試合を中継したテレビ東京のカメラに向かい「世界タイトル奪取、やったぜ!」とガッツポーズで締めくくった。

　八重樫東のWBA世界ミニマム級王座戴冠により、2団体の王座統一戦に向け大きな一歩を踏み出した。はたして"音速の拳"は世界ミニマム級戦線のど真ん中に君臨することができるのか…。