『侍』石田順裕

　一度世界のベルトを巻いたベテランボクサーが、ノンタイトル戦で己の強さをアピールし、もう一度ファンの期待を集めるのは容易ではない。
　ボクシングを始めた頃に目指した将来は、『今』だと知り、誰よりも自分が一番強いことを証明する方法を考えた。だから、タイトルではなく、対戦相手にこだわった。
　今年4月9日のカークランド戦で、『一勝の重さ』を教えてくれた『侍:石田順裕』にとって、元WBA世界スーパーウェルター級暫定王者という名誉ある肩書きは、若き日の目標でもなければ、自身を守る鎧でもない。これから世界の強豪や期待の新鋭と戦うためのエサに過ぎない。