名匠ローチの半生�B

名匠ローチの半生 PART�B

　「ワイルドカードジム」創設から10年の節目となる2001年、ローチはマニー・パッキャオと出会う。最初はともに新たなパートナーに大きな期待を寄せていたわけではなかったはずだ。
　そんな折り、パッキャオに代理で世界挑戦の話が舞い込む。IBF世界スーパーバンタム級王者リーロ・レジャバ(南ア)に挑むはずだったエンリケ・サンチェス(メキシコ)が負傷して試合に出られないというのだ。試合2週間前という慌しさだったが、ふたりは承諾。この賭けがローチ&パッキャオのコンビに幸運をもたらすことになるのだが、この事実は世界中の多くのボクシングファンが知るところであろう。
　オスカー・デラ・ホーヤ(米)が5階級制覇をかけてハビエル・カスティリェホ(スペイン)に挑む注目イベントの前座でド派手なKO勝ちを収めたパッキャオは、トップランク社の目にとまり契約。その後も数々の注目ファイトを勝ち抜いて現在に至る。
　比例してローチの知名度、評価も急上昇した。マイク・タイソン(米)やデラ・ホーヤまでが指導を依頼するまでになったのだ。マルコ・アントニオ・バレラ(メキシコ)をストップした03年、エリック・モラレス(メキシコ)に連勝した06年、スーパーフェザー級とライト級を制覇しデラ・ホーヤをも打ち破った08年、そしてリッキー・ハットン(英)とミゲール・コット(プエルトリコ)を衝撃的なKOで下した09年。ローチは4度も全米記者協会から「トレーナー・オブ・ザ・イヤー」(年間最高指導者)に選ばれている。
　約20年間に30人近いボクサーを世界一の座に導いた名匠ローチだが、彼自身はパーキンソン氏病と闘っている最中でもある。

※次回はシェーン・モズリーのトレーナー、ナジーム・リチャードソン氏を紹介予定