後のない凱旋試合へ

　村田諒太が遠征試合を行う中国・上海の郊外で28日、フェンシングをはじめスカッシュやボクシングのエキスパートを育成するSECAアカデミーで、現地時間の16時から、30日のメインイベンターであるゾウ・シミン(中国)の公開練習が行われた。

　村田諒太(帝拳)が世界前哨戦を行う中国・上海の郊外では、28日、フェンシング、スカッシュ、ボクシングのエキスパートを育成するSECAアカデミーにて、現地時間の16時から、メインイベンターのゾウ・シミン(中国)が公開練習を行った。前回の試合でプロ初黒星を喫した中国のスーパーエリートは自身のプロ経験初の本土戦をどう意識しているのか。

「ここまであっという間のようで長かった。2008年に北京で金メダリストになってからも、私は様々な試合経験を積み、挫折も味わってきた」
　ジャッキー・チェンを彷彿とさせる鼻立ちと笑顔を見せながら、中国ボクシング史上最も偉大な男は、これまでをそう振り返った。

　中国人として初めて世界選手権と五輪の表彰台に立ち、中国人として初めて世界選手権と五輪を制覇し、連覇した。ロンドン五輪後にプロへ転向。その後も順調に試合経験を積み、無敗のまま、世界王座に就くつもりだった。

　しかし、昨年3月、マカオを舞台に行われた世界王座初挑戦では、かつては格下だったアムナット・ルエンロン(タイ)に完敗。それからゾウは試合から遠ざかってきた。前回の黒星によって、ゾウはいっそう、「プロには向いていないのでは」という懸念が強まっている。だからこそ、もう負けられない。
　この日は、軽めのシャドーボクシングとミット打ちのみでトレーニングを終えようとしたところに、テレビの記者からシングルパンチングボール打ちをリクエストされて、3分ほど打ってみせた。

「疲れはまだ残っている。でもあさってのリングではベストパフォーマンスを披露するよ。私は、今もこの国のボクシング界で重要人物だと思っているからね」
　超エリートは、前回の失敗をバネにできるか。