2014年を回顧<軽・中量級>

　新しい年までカウントダウンが始まったが、この機会に今年1年の世界のボクシング界の動きを階級ごとに振り返ってみよう。

フェザー級戦線異常あり
　ライト級ではテレンス・クロフォード(米)というスター候補が誕生した。3月にリッキー・バーンズ(英)を下してWBO王座を獲得し、6月にはユリオルキス・ガンボア(キューバ/米)から4度のダウンを奪って9回TKO勝ち。11月には指名挑戦者レイムンド・ベルトラン(メキシコ)にも大差の判定勝ちを収めた。スーパーライト級への転向プランもあるだけに、今後に注目が集まる。
　スーパーフェザー級はWBA王者の内山高志(ワタナベ)、WBC王者の三浦隆司(帝拳)とも各1度の防衛戦という、やや寂しい状態だった。IBFでは長身の技巧派強打者ランセス・バルテレミ(キューバ/米)が新王者になった。WBO王者だったミゲール・ガルシア(米)はビジネス上のトラブルで活動停止状態が続いており、ガルシアが剥奪された王座はベテランのオルランド・サリド(メキシコ)が手に入れた。

　フェザー級は活況を呈した1年だった。このクラスに参入したノニト・ドネア(比/米)が5月にWBAのスーパー王者になったが、10月にはレギュラー王者のニコラス・ウォータース(ジャマイカ)に6回TKO負け。この勝利でウォータースが一気に第一人者の地位に駆け上がった。WBCはジョニー・ゴンサレス(メキシコ)が2度の防衛、IBFではイブゲニー・グラドビッチ(露/米)が同じく2度の防衛を果たした。そんななかWBOでは6月にワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が新たな支配者になった。プロ3戦目の戴冠はセンサク・ムアンスリン(タイ)と並ぶ最速タイ記録である。ロマチェンコは11月には初防衛にも成功。ウォータースをはじめとした他団体王者との対決が期待される。
　スーパーバンタム級はWBA、WBO王者ギジェルモ・リゴンドー(キューバ/米)の実力が際立っているが、WBC王者レオ・サンタ・クルス(メキシコ/米)やIBF王座についたカール・フランプトン(英)、WBAのレギュラー王者スコット・クイッグ(英)らも面白い存在となっている。

　バンタム級では山中慎介(帝拳)が2度の防衛を果たし、第一人者の座をキープ。WBO王者の亀田和毅も米国ラスベガス、シカゴで防衛に成功して評価を高めている。来春にはWBA王者ジェイミー・マクドネル(英)との統一戦が計画されている。こうした一方、WBAのスーパー王者だったアンセルモ・モレノ(パナマ)がファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)に負傷判定負けを喫して王座から陥落した。元五輪戦士でもあるパヤノにも注目したい。
　スーパーフライ級では3月に河野がWBA王座を奪回。5月にはカルロス・クアドラス(メキシコ/帝拳)がWBC王座、亀田大毅が返上したIBF王座は7月にゾラニ・テテ(南ア)がそれぞれ獲得した。
　WBO王座はオマール・ナルバエス(亜)が防衛テープを二桁に乗せ、フライ級と合わせて2階級で10度以上の防衛という珍しい記録を樹立した。

　フライ級はWBA、WBO王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)と、八重樫東(大橋)から王座を奪ったWBC王者ローマン・ゴンサレス(ニカラグア/帝拳)の2強状態に入った。IBF王者アムナット・ルエンロエン(タイ)は1月に戴冠を果たし、5月に井岡一翔(井岡)、9月にマクウィリアムス・アローヨ(プエルトリコ)を退けたが、ともに苦しい試合だった。来年3月には五輪連覇の実績を持つゾウ・シミン(中国)の挑戦を受けることになっている。WBA王者ファン・カルロス・レベコ(亜)の王座も安泰だった。こちらも来春に予定される井岡との防衛戦が正念場となりそうだ。

　ライトフライ級は年初に井岡がWBA王座を返上。これにともない暫定王者だったアルベルト・ロセル(ペルー)が正王者に昇格し、大晦日に田口良一(ワタナベ)の挑戦を受ける。IBF王者ジョンリエル・カシメロ(比)は計量失格で王座を失うという失態を犯し、それを機にフライ級に転向した。
　ミニマム級ではフランシスコ・ロドリゲス(メキシコ)が高山勝成(仲里)に勝ってIBFとWBOの統一を果たしたが、のちに返上した。WBA王者ヘッキー・バドラー(南ア)は安泰だったが、WBCは熊朝忠(中国)からオズワルド・ノボア(メキシコ)、さらにワンヘン・ミーナヨーチン(タイ)と王座が移動した。