2014年を回顧<中・重量級>

　新しい年までカウントダウンが始まったが、この機会に今年1年の世界のボクシング界の動きを階級ごとに振り返ってみよう。

コバレフとゴロフキンの活躍
　21世紀に入ってから並走を続ける世界的な2大スター、フロイド・メイウェザー(米)とマニー・パッキャオ(比)は、今年も存在感を示した。メイウェザーはマルコス・マイダナ(亜)との2連戦でいずれも明白な判定勝ちを収め、プロデビューからの連勝を47(26KO)に伸ばした。2試合で80億円超の報酬を得たものと推測されるが、迫力という点では物足りなさが残ったともいえる。パッキャオは4月にティモシー・ブラッドリー(米)からWBO世界ウェルター級王座を奪回。11月にははるか格下のクリス・アルジェリ(米)から6度のダウンを奪って圧勝したが、仕留めることはできなかった。こちらも70点から80点の出来といえよう。ともに実績や力量の点でバランスのとれた対戦相手が皆無という現実があり、いよいよプロモーターやテレビ局という大きな壁を乗り越えて直接対決の機運が高まっている。

　ヘビー級ではWBA、IBF、WBO3団体統一王者ウラジミール・クリチコ(ウクライナ)が2度の防衛を加え、06年の返り咲き後17度目の防衛に成功した。この3戦でWBA、WBO、IBFの指名挑戦者を立て続けに一蹴しており、頭抜けた存在となっている。WBCではバーメイン・スティバーン(ハイチ/カナダ/米)がビタリ・クリチコ(ウクライナ)の後継者となったが、まだ評価を定める段階には至っていない。32連続KO勝ちの怪物、デオンタイ・ワイルダー(米)との初防衛戦が来年1月17日に決まっており、その勝者がクリチコの新たなライバルとして認知されることになるだろう。12年ロンドン五輪金メダリストのアンソニー・ジョシュア(英)が連続KOを10まで伸ばし、早くも世界ランク入りを果たした。来年の注目株のひとりといえる。

　クルーザー級は今年もWBO王者マルコ・フック(セルベイ/独)、IBF王者ジョアン・パブロ・エルナンデス(キューバ/独)の並走が続いた。
　この数年、ライトヘビー級が活況を呈している。今年はIBF王者のバーナード・ホプキンス(米)が49歳でWBAとの統一に成功したが、そのホプキンスにWBO王者セルゲイ・コバレフ(露/米)が完勝して3団体統一王者になった。サウスポーの強打者、WBC王者アドニス・スティーブンソン(ハイチ/カナダ)との頂上決戦が待たれる。

　スーパーミドル級ではWBAとIBFの王座を持つカール・フロッチ(英)が5月にジョージ・グローブス(英)を8万人の大観衆の前で衝撃的なワンパンチKO勝ちを収め、株を上げた。その一方、アンドレ・ウォード(米)がビジネス上のトラブルで実戦から遠ざかっており、やや寂しい状況となっている。
　ミドル級はゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン/独)が年間3度の防衛を果たし、連続KO防衛を12に伸ばした。WBAではスーパー王者に昇格し、10月にはWBCの暫定王座も獲得した。WBCではミゲール・コット(プエルトリコ)がセルヒオ・マルチネス(亜)の牙城を崩し、新たな支配者となった。WBO王者だったピーター・クィリン(米)がビジネス上の問題で王座を返上したことは惜しまれるが、後釜に座った“逆転王”アンディ・リー(英/アイルランド)に期待したい。

　スーパーウェルター級は大きな動きは見られなかった。WBA王者エリスランディ・ララ(キューバ/米)、WBO王者デメトリアス・アンドレイド(米)は各1度の防衛に留まり、IBF王座はカルロス・モリナ(メキシコ/米)からコーネリアス・バンドレイジ(米)に持ち主が変わった。無冠のサウル・アルバレス(メキシコ)が2勝したが、インパクトという点ではもうひとつだった。
　ウェルター級はメイウェザーとパッキャオが話題を二分したが、一方でケル・ブルック(英)がショーン・ポーター(米)に競り勝ってIBF王座を獲得して台頭してきた。勢いづいたところで暴漢に襲われて初防衛戦が伸びたのは気の毒としか言いようがない。メイウェザーへの挑戦を狙うアミール・カーン(英)は12月に元王者デボン・アレクサンダー(米)に快勝、評価を上げて新年を迎えることになった。
　スーパーライト級の第一人者、WBA、WBC2団体王者ダニー・ガルシア(米)は2月と8月にリングに上がったが、勝ちはしたものの相手の質や結果の点で十分にアピールできたとはいえない年だった。ジェシー・バルガス(米)がWBA王座をさらったが、まだ評価を定めるところまではいっていない。エイドリアン・ブローナー(米)、ルーカス・マティセ(亜)、ルスラン・プロボドニコフ(露)、アルジェリらの奮起が待たれる。