那須川天心! 進化中。

　プロボクシング2戦目を迎えた那須川天心(25=帝拳)が18日、東京・有明アリーナで開催された「Prime Video Presents Live Boxing 5」のセミファイナルで、メキシコ国内バンタム級王者のルイス・グスマン(27=メキシコ)と55.7kg契約8回戦で対戦した。

　初回と終盤にダウンを奪った那須川が、終始、手元のスピードを生かして試合をリード。グスマンも積極的に手を出す場面もあったが、ステップを生かしたディフェンス力の高さをアピールした那須川が完勝。ジャッジ3者ともに80-70で那須川を支持した。

　試合後、天心に大歓声を贈ったファンに対して”神童”は「自分自身のチャンピオンベルトを見つけて、頑張ってください。日本中を”かませる”ような選手になるので、これからも期待していてください」と、ボクシングに対する熱い気持ちを伝えた。海外でも配信されているため、英語でも"Tenshin"が自己紹介した。

　ダウンを奪った上で、判定勝利を挙げた那須川は「無事に2戦目、勝つことが出来てホッとしている。次に進むステップが見えた。成長する姿を見せられてよかった。もっと経験を積んで強くなっていきたい。前回と比べ、どっしり構え、自分の動きができるようになったのが良かった」と試合を振り返ったが、課題も見えた。「ダウンをとってから相手が来なかった時の対処を、次の目標にしたい」とボクシングの難しさを痛感した。「6Rにボディを効かせてチャンスだったが、4Rにパンチを打ったら稲妻が走った(傷めた)こともあって、迷いがあった。左が打てないならもっと右を打ってとか、対処できたら良かった。内容は圧倒できたと思うが、お客さんがいる以上、KOで勝ちたかった。次はしっかり倒して勝ちたい」と試合後に大きな拍手を浴びた天心だが、満足はしていなかった。

　ファンを楽しませるのもプロの仕事。「最後のダウンの手ごたえは、多少当たっていたとは思うので、あれで終わっていたらよかったが…。見せ場は作れたので。次はまとめて倒し切れるように、そういうストーリーを見守ってほしい」と抱負を語って会見を締め括った。

　会見に同席した粟生隆寛トレーナーは「練習で課題を詰めて、2戦目でダウンをとって、ステップアップできた。次は、倒して勝つボクシングが出来たら」と天心の更なる成長に期待を寄せた。

　帝拳プロモーションの本田明彦会長は「60年ボクシングに携わってきて一番の選手」と、那須川のポテンシャルの高さに太鼓判を押した。それでも、ボクシングの難しさは、試合で経験を積まないと学ぶことはできない。この日の試合では、那須川が初回にダウンを奪ったが「あれで試合が終わっていたら、勘違いしてたかもしれない」と、タフなグスマン戦を成長の糧とすることができたとし、「絶対に世界チャンピオンにするが、時間はかかる」と述べ、「10戦目までは、世界はやらせない」と明言した。

　この日の会場では、子供たちの声援を聞くこともできた。これまで会場で目にしてきたボクシングファン層に比べ、やや年齢層が若く感じられたが、普段ボクシングの取材をするスポーツ紙の記者たちの口からも、同様の感想が溢れた。これに関して、本田会長は、「那須川がボクシングに来てから、ボクシングファンの年齢層が下がった」とWOWOWのエキサイトマッチなどの視聴者なども含め、ファン層が広がりつつあることを明かした。

　会場で生観戦したWBO-APウェルター級王者の佐々木尽(22=八王子中屋)は「入場から魅せる素晴らしい入りで、スター性が違いました。試合内容というよりも、那須川天心が試合をしてることで盛り上がっている会場、ここが素晴らしかったです。自分も誰もが知るスーパースターになりたいと思います! 天心選手、今日は最高の試合ありがとうございました。おめでとうございました!」

　IBFフェザー級次期挑戦者の阿部麗也(KG大和)も会場で生観戦した。「天心選手のスピード、タイミング抜群でしたね! あとは、やっぱりスピード重視になるせいか、パンチのパワーの部分が課題ですかね! 倒せるチャンスで慎重になってしまって、勿体ないなってとこも思いました! まあ自分も慎重派で、パンチもスピード重視で打っちゃうので、めちゃくちゃ天心選手の気持ちは分かります(笑)! ボクシングスキルはめちゃくちゃ高いので、今後に期待です! 最後左手痛めたように見えたので、なんともなければいいですが!」