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弥生初日に行われるWBC世界バンタム級タイトルマッチですが、チャンピオンのルイス・ネリ(メキシコ)が前日計量で失敗。王座剥奪となりました。そもそも日本に来た時点で4キロオーバーというのは明らかに無謀です。前回は暑い夏だったので体重を落としやすいですが、冬だと汗も出にくいので体重は落としにくくなります。そのあたりも考慮せず来日して体重を作れずリタイア。王者としてのプライドはなかったのでしょうか。
水抜きの減量について
ボクサーは減量の最終調整で水抜きをします。水抜きをすることで筋肉や脂肪を落とすことよりも短期間に効率的に体重を落とすことができます。水分なら戻るのも早いので試合の時には体重も戻り、有利な体格で戦うことができます。
飲めないのが辛い!
私の場合は計量の前日までに2キロ弱オーバーにしておきました。そこから厚着をしてジムワークで水分を絞り出して体重を落とします。リミットまでいけば軽い食事と水分を取ることができますが、落ちない時は絶食して次の日も飲まず食わずで体重を落とします。夜も喉が渇いてほとんど寝れません。食べれないことより飲めない方が10倍キツイです。
体重の落ち幅はコンディション次第
体重を落とす時に注意しなければならないのはコンディションと気候です。暑い夏と冬では体重の落ち幅も違いますし、自分のコンディションがうまく作れていない時は体重も落ちにくいです。当日は500gぐらいの誤差であれば動かなくても落とすことができますが、それ以上になると動かないと落とすことは難しいでしょう。サウナに入って落とすケースもありますが、水分を絞った状態だと落とすのにも限界があります。水抜きで絞っている状態からさらに落とすのには精神的にも肉体的にもかなり負担となります。喉が乾ききった状態からさらに100〜200グラム落とすのは本当にキツイです。チャンピオンになってハングリーさが欠けたネリは王者でいることすらも放棄してしまい、油断で体重を作れず根を上げてしまったのでしょう。
前回の試合で脅威を感じていたのでは?
ネリの真意まではわかりませんが、少しでも有利な状況で戦いたかったのもあると思います。選手は試合前になると勝つために何かに頼りたくなったり、できるだけ優位な条件で戦いたくなります。最後の減量を無理して落とすことよりも、自身のコンディションと試合で勝つことを優先したのでしょう。前回の試合はネリがTKOで勝ちましたが、試合の中で山中選手の左ストレートも何発か入っていました。途中でストップになったラッシュも思ったより手応えがなかったのかもしれません。そのあたりはリングで拳を交えた本人達にしかわかりませんが、ネリにとって山中選手のパンチは予想以上に脅威だったのでしょう。強気な発言を繰り返していましたが、その裏側にはハッタリもあり、自分を鼓舞することで不安や恐怖を隠していたようにも見えます。
お互い万全のコンディションでやりたかった!
山中選手も決して減量は楽ではありません。私も試合1週間ほど前に様子を見にいきましたが、厚着をして慎重に体重をコントロールして落としていました。今回の試合に懸ける思いも伝わってきましたし、プロとして抜かりなくコンディションを作っていました。そんな中で、自分は仕上げてきたのに相手が計量をオーバーするとは、やるせないでしょう。ボクサーは、最後は自分との戦いに勝つことでリングに上がることができます。それすらも守れない選手にリングに立つ資格はあるのでしょうか。山中選手もお互いに万全な状態で戦いたかったと思います。明日の試合は予定通り行われますが、今後このようなケースが起こらないような仕組みの改善が望まれます。