■そういえば試合の次の日がクリスマスイブですね。
八重樫 どんな顔のサンタさんになるのかわからないですけどね。勝って一夜明け会見してそのままクリスマスを迎えたいですね。
■勝てば、長谷川穂積氏の35歳9ヵ月を抜く36歳10カ月となる日本人男子最年長での世界王座奪取となります。
八重樫 関係ないです。海外では僕くらいの年で活躍している選手はたくさんいますから。ドネアだってまだ続けるじゃないですか。同い年ですよ。
■11月の井上選手との試合を見てドネア選手の方に何を感じましたか?
八重樫 闘志。みんなそうですが、あそこまでやるとは思わなかったんじゃないですか。気迫がありましたね。だてに5階級制覇はしていないなと。5階級も獲っている人間ってたまたまじゃないんですよ。絶対に何かを持っているんです。
■同い年のドネア選手の活躍に負けていられないですね。
八重樫 そうですね。ムザラネも同い年で「年齢は関係ない」って言っても意味がないですけど、"まだ八重樫は終わっていない"というところを見せたい。いろんな意味で最後の試合のように思われたり言われたりしていますが、僕自身はそうは思っていない。
■八重樫選手は、これまでも何度もこれまでかというところから這い上がって王座を奪還してきました。
八重樫 らしくいたいなと思いますよ。「やっぱり八重樫の試合だな」と思ってもらいたい。村田も拳四朗もいいですし、井上尚弥も良い。たくさん個性的なボクサーがいる中で「俺は八重樫のボクシングが好きだな」という風になったらいいな、とずっと思っています。
■八重樫選手のボクシングとは?
八重樫 尚弥と同じジムでチャンピオン同士の時代があり、どうしても比べられたりもしましたが、「尚弥は尚弥、俺は俺」と思ってやってきました。同じ勝ちでも僕は腫れた顔で尚弥はきれいな顔をしていても勝ちは勝ちじゃないですか。自分は自分のボクシングの色があって、自分の色を出せれば見ている人も面白いんじゃないかな。そういうボクサーでいたい。
■では今回も期待してもいいですね。
八重樫 半分くらい(笑)。不安半分、期待半分の方が面白いでしょ。「あ〜、負けたら八重樫辞めるのかな。でも八重樫だったらやってくれるんじゃないかな」と。それがハラハラドキドキってなるじゃないですか。それが八重樫劇場ですよ。
■どうもありがとうございました。
「ボクモバの目」
何度もこれまでかという場面から立ち上がり、ボクシングファンに感動を与えてきた八重樫。スピードでかき回し、序盤から主導権を掴みたい。打ち合いの場面でどれだけの精神的アドバンテージを握っているか。強いチャンピオンだが、「八重樫なら何とかしてくれるだろう」と期待せずにはいられない。年末の世界戦で勝利の味を噛み締めてほしいと願う。
<取材・構成/やすおかだいご>
<写真/KISHIMOTO・ボビー>