"激闘王"が2年半ぶりの世界戦で再び奇跡を超す! 世界3階級制覇王者の八重樫東(36=大橋)は、12月23日に横浜アリーナでIBF(国際ボクシング連盟)フライ級王者のモルティ・ムザラネ(37=南アフリカ)に挑む。スーパーフライ級での4階級制覇を目指していた八重樫だったが、交渉が難航しフライ級での王座奪還に方向転換した。
ムザラネは、昨年7月の王座決定戦で、6年ぶりに王座返り咲きを果たすと大晦日にマカオで坂本真宏(六島)、今年5月に黒田雅之(川崎新田)を破り2度の防衛に成功している。長いリーチを活かしガードを固め、攻防の駆け引きに長けたベテランチャンピオンだ。八重樫は、安定王者からベルトをもぎ取りにいくため、これまで以上にハードなメニューで自らの体をいじめ抜いていた。
■2年半ぶりに王座奪還のチャンスが巡ってきました。ここまで待ち、長く感じたのではないでしょうか?
八重樫 「やっときたか」という気持ちはないですね。チャンスはそう簡単に転がっていないのは知っているし、そういうタイミングだったんじゃないですか。幸いケガをしていない状態だし、方向性という意味では、「こっちに行けばいいんだ」という、ある種の行き場所が見つかったというか(笑)。
■本日、練習を見させてもらいましたが、反復横跳びのメニューを見たのは初めてです。
八重樫 見たことなかったですか?意図があって最近、取り入れたので見たことがないのは当然ですよ(笑)。
■ムザラネ選手と対戦が決まった時の心境を聞かせてください。
八重樫 嫌な相手だなと思いました。ジャンケンで例えるなら彼がグーだとしたら、僕はチョキなんじゃないかな。パーのタイプの選手なら得意だけど、ああいうタイプは得意ではないです。
■なるほど…。
八重樫 尚弥(井上尚弥)みたいなグーチョキパーみたいな奴もいますが、あれは特別で力が拮抗している場合は相性が重要です。そういう意味ではさほど相性は良くない。ただ、蓋を開けてみないとわからなくて、もしかしたらめちゃくちゃ噛み合うかもしれない。それは風を感じてやるしかないです。
■これまでのキャリアで相性が悪いなと感じた選手はいますか?
八重樫 当時はサウスポーが嫌いでしたので、五十嵐は思い切り悪かったですね。ジャンケンだとしたら、あいつがパーで僕がグーだったのですが、僕がチョキにして相性を良くしたんです。現時点ではムザラネとは相性が悪いです。というか、どの選手もムザラネとは(相性が)悪いと思いますよ。でも、だからこそやりがいがありますよね。
※2013年4月に五十嵐俊幸(帝拳→引退)が保持していたWBC世界フライ級王座に挑戦し3-0の判定勝ちで王座を獲得。
■相性が悪いということは、八重樫選手自身は不利だと思っているのでしょうか?
八重樫 そうは思っていないですよ。変な話ですが、ドンピシャにハマる感じかもしれない感はあります。どういう風に打ち合いに持っていくのかが一番大事なことで、無理矢理、強引に(打ち合いに)引き込まれるのか、それとも自分が主導権を握って引き込んでいくのかという。そこは全然違うと思います。僕がペースを握ってグッと引っ張っていければ、僕が優位な打ち合いに持っていける。
■そうですね。
八重樫 距離感もタイミングもそうです。やってみないと分からないですが、相手が自分の思うように動いてくれたらハマるんじゃないかな。
■我慢比べの展開になると、ムザラネ選手が得意とするところだと思います。
八重樫 そういうのじゃないんです。相手の土俵で相撲を取っても、こっちがしんどいだけなんで。それこそ、こっちの土俵に引きずり込んでから勝負します。