■サウスポーに対しても圧力が強く、バッティングでリズムが狂った内藤選手から終盤に2度のダウンを奪っています。近い距離で仕事をさせたくはないですね。
井上 バッティングには注意したいですね。初の12ラウンドですが、何より集中力がカギになると思います。この試合が決まり、アマの頃から仲が良いリッキー(内藤)からは、パンチが強くボクシングを知っている動きをする選手だと聞きました。
■当日はWBO関係者も多く来場するそうですね。
井上 そういう部分でも良いところを見せたいし、絶好のアピールの場だと思っています。
■WBOアジアを獲ることが前提ですが、日本王座は保持していくのでしょうか。
井上 そこは分からないんですよ。でも先日の最強挑戦者決定戦で来年のチャンピオンカーニバルの相手が永田大士選手(三迫)に決まったので、その試合はやろうかなと考えています。
■国内のスーパーライト級で目に留まる選手がいれば教えてください。
井上 どうですかね、OPBF王座をリッキーが持っていますが、やりたくはないですね。それよりも海外から話をもらえれば日本を出てやってみたい。ナオが(米大手プロモーターの)トップランク社と契約し、ほかにも強い選手がいると分かれば向こうも動くと思うので、反応をしてもらえるようなボクシングをしていきたいですね。
■次の試合はそのための第一歩ですね。井上選手が目指すボクサー像を聞かせてください。
井上 理想はないですが、いろんな人に応援される選手になりたい。ナオのようにボクシングであれだけ日本中を沸かせられるのは凄いと思う。
■今や国民的なヒーローです。
井上 でも僕からすれば、昔からあの強さなのでここまで長かったなという印象です。その階級の一番を決めるWBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)が一般の人にも分かりやすかったのでしょうね。
■間近で観ていてどうでしたか?
井上 あのノニト・ドネアを相手にハラハラする場面も多かったのですが、とにかく良い試合でした。12ラウンド、あんなに面白い試合は久しぶりでしょう。あそこまで追い込まれたナオを見たのは僕も初めてでした。
■あの気持ちの強さは才能だけじゃなく、積み上げてきたものがあってこそだと感じました。最後に井上選手の今後の夢を教えてください。
井上 僕の夢はこの素晴らしいスポーツをもっと多くの人に伝えること。漫画もその手段のひとつかもしれませんね。今は従兄兄弟を描くことが多いのですが、今後はボクシングの技術的なことも描いていきたい。
■将来的には単行本化される可能性もあるのですね。
井上 いつかコミケに出せればいいですね。強さだけでナオが広めたボクシングを、このスポーツに縁のない人たちにも漫画をきっかけで知ってもらえるようになれば嬉しい。
「ボクモバの目」
試合は3日から東京で開催されるWBO総会と重なり、当日は来日したWBO役員、関係者が多く観戦に訪れるという。井上にとっては、上位ランク入りをアピールする絶好のチャンスと言えるが、強固なフレームを持つチャベスはこれまでKO負けがなく、フィニッシュにまで持ち込むのはかなり難しい相手だ。左右のパンチもあり、攻撃にばかり意識を向けると足下をすくわれかねないが、そこは井上のスピードと技術力に期待したい。ボクシングをより多くの層に広めたいと願う伝道師が、ここから世界へと羽ばたく。
<取材・構成・写真/野原 写真/ボビー>