12月23日(月)に横浜アリーナでIBF(国際ボクシング連盟)フライ級王者のモルティ・ムザラネ(37=南アフリカ)に挑む元世界3階級制覇王者で同級14位の八重樫東(36=大橋)。その7ヶ月前にムザラネの王座に挑戦し、惜敗した現IBF世界同級11位の黒田雅之(33=川崎新田)は最もムザラネの強さを肌で感じている一人だろう。12月初旬、黒田に所属ジムに足を運んでもらい、ムザラネ戦の感想を聞いてきた。
■お久しぶりです。今年5月の世界戦が終わってからどのような日々を過ごしているのでしょうか?
黒田 朝は毎日走っていますが、ジムワークは週に3回ペースです。ジムでミットを持ち練習生に教えたりもしています。少しずつ現役を続けようかなという方向になってきていますが、「やろうかな」じゃダメじゃないですか。完璧にやるという気持ちにならないと。ただ、いい迷いだと思うんです。どこの道を選んでも自分にとってはマイナスにはならない。だからこそ悩んでいるんでしょうね。正直、負けたら辞めようと思っていたのですが、こんなに悩むとは思っていなかったです。
■早速お聞きしたいのですが、ムザラネ選手と戦って感じたことを教えてください。
黒田 崩しにくいボクシングだなと思いました。派手さはないけど手堅い。いつの間にか勝ちを自分の方に手繰り寄せている。
■いつの間にかペースを取られていると?
黒田 戦っている本人は、主導権を取られているつもりはなかったんですけどね。一番思ったのはガードが硬くてジャブが上手い。何というんだろう…、ジャブが気持ち一歩遠い場所から飛んできます。距離が長いのは予想していましたが、想定していた以上でしたね。そこは僕の見通しが甘かったです。
■パンチ力はどうでしょう?
黒田 ないわけではないです。こっちの顔が腫れやすい、硬いパンチでした。
■ムザラネ選手は、ガードをガッチリとかためてきますよね。
黒田 リング上で対峙して「打つところがないなぁ」と思いました。とりあえずガードの上からボディを叩いていく作戦で、その通りで来たのですが、それは良くも悪くもでした。ガードの上から打ってもそうそう効くものではなかったですね。
■ボディを叩きながら、どのようなことを考えていましたか?
黒田 とにかくこじ開けてやろうと。腹を打って空いたら顔面を狙ったのですが、ガードを空けてくれなかったですね。あとは、ボディにパンチは当たっているのですが、一番良い角度で当てさせてくれない。急所は隠しているのです。打たれてはいけない、拳を垂直に当てさせない場所はしっかりと守っていました。一番いい場所に当たれば6〜7割の力で倒れてくれるんですが。