[ニュース]2025.12.21
前日本王者の永田丈晶が引退を表明

前日本フライ級王者の永田丈晶(28=協栄)が、28歳の誕生日を迎えた12月11日、自身のSNSを通じて現役引退を発表した。
アマチュア58戦38勝20敗のキャリアを経て、2021年6月にプロデビュー。重厚なプレスと回転力を生かした連打、そしてラウンドを追うごとにギアを上げる無尽蔵のスタミナを武器に、永田はプロわずか5戦目で日本タイトルを獲得した。初防衛戦で王座を失ったものの、今年4月の王座決定戦で再びベルトを巻き、2度の日本王座戴冠を成し遂げた。
ラストファイトとなったのは、今年8月に行われた野上翔(25=RK蒲田)戦。試合後、8月下旬には引退を決断していたという。
「元々、次の試合で負けたら辞めることを考えていた。ここから這い上がるのはメンタル的にも厳しい。前戦で負けて、本当に後悔がないかをしっかり考えた上での決断でした」。そう理由を明かした上で、「納得して辞めることができた。試合を見て感動した、勇気づけられたと、言っていただけたことがうれしかった。見ている人に何かを与えられたなら、それが一番」と穏やかな表情で語った。
プロキャリア初期から場所を問わず強豪と拳を交え、下剋上を重ねて一気に日本王者まで駆け上がった。「自分で言うのもアレだが、よくやったと思う」。アウェー戦も3戦全勝と、永田の勝負強さは際立っていた。
「アマチュア時代は、前に出るだけのスタイルだったが、協栄ジムで教えていただき、自分なりの形を作ることができた。本当に良い環境だった」。大学卒業後、一度は企業に就職し、ボクシングから離れたが、プロへの思いを断ち切れず、半年後に協栄ジムへ入門。そこから再びキャリアを積み上げていった。
KOが華とされるボクシング界において、永田は熱量の高い試合内容と、どんな局面でも表情を変えないポーカーフェイスで存在感を放った。「感情を出してナンボ、という世界ですからね」。淡々と、しかし確実にポイントを重ねる戦いぶりは唯一無二だった。
「パンチがなくても上に行けることを証明したかった」
「どう頑張っても、パンチ力はつかない。だからコツコツ戦うスタイルを作った。ボクシングはパンチ力だけじゃないことを証明したかった」と、永田は自身のボクシングを振り返った。出入りを生かして自分の距離に引き込み、接戦を勝ち抜く愚直なスタイルで、KO勝利こそ一度もなかったが、日本王座に2度就いた事実が、その完成度を物語る。
思い出深い試合として挙げたのは、プロ3戦目でランキング入りを果たした峯佑輔戦。「あの試合が分岐点。強い選手に勝てたことで自信がつき、自分のレベルが一段階上がったと感じた」。
今後は、育休中の勤務先に復職し、社会人として新たな一歩を踏み出す。将来的にはボクシング界への恩返しも見据える。「小学生や中学生に、ボクシングを通じて人間力を育てることをしていきたい」。
最後に感謝の言葉を口にした。「内田さん(内田洋ニチーフトレーナー)や瀬藤会長(瀬藤幹人会長)に出会っていなければ、ここまで来られなかった。そして、周りの応援があってこそ」。
「山あり谷ありのボクシング人生だったが、全うできたと思う」。静かに、しかし確かな足取りで歩んだ王者の拳闘人生は、ここで幕を閉じる。
取材を重ねる中で一貫して感じたのは、永田丈晶というボクサーの「誠実さ」だった。決して派手ではないが、自分にできることを正確に見極め、逃げずに積み上げていく。その姿勢はリングの上だけでなく、言葉の端々にもにじんでいた。勝っても驕らず、負けても取り繕わない。常に等身大でボクシングと向き合い続けた姿は、多くのファンの心に確かな印象を残したはずだ。
リングを降りても、その生き方が色あせることはない。永田丈晶がボクシングを通じて示した価値と時間に、心から敬意と感謝を表したい。本当にお疲れさまでした。そして、これまで数々の熱戦と真摯な言葉を届けてくれたことに、深く感謝したい。
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