世界中のボクシングファンが注目するWBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)バンタム級決勝、WBA(世界ボクシング協会)、IBF(国際ボクシング連盟)同級王者の井上尚弥(26=大橋)vsWBA世界同級スーパー王者のノニト・ドネア(36=比/米)まで約3週間となった。
世界中の強豪を完膚なきまでにキャンバスに沈め、今やパウンド・フォー・パウンド(全階級の中で、最も強い選手をランキング形式で表したもの)ランキング上位に位置する井上が、世界5階級制覇のドネアに引導を渡すのか、それとも"フィリピーノフラッシュ"のニックネームを持つドネアが、井上の全勝記録をストップするのか?試合が間近に迫り、世紀の一戦の予想が飛び交っている。
"モンスター"井上は、これまでのキャリアで3人の日本人と対決しているが、世界戦となると河野公平氏(ワタナベ→引退)ただ一人だ。16年12月に当時、井上が保持していたWBO(世界ボクシング機構)スーパーフライ級王座に挑戦した(井上の6回TKO勝ち)河野氏が、9月中旬に都内某所で当時の試合を振り返り、井上の強さについて語った。
■ご無沙汰しています。久しぶりにお会いしましたが、体重はあまり変わっていないように見えますが。
河野 太るのは嫌なので57kgにキープしています。現役時代とあまり変わっていないですね。でも、筋肉量は落ちてきたので悲しいですよ。ずっとグローブは握っていないのですが、懸垂と腹筋だけはしています。
■当時はどのような経緯で井上選手との試合が決まったのでしょうか?
河野 16年8月に王座を陥落してから1ヶ月くらいした頃の話なのですが、井上君の対戦相手がなかなか決まらなかったようで記者さんが「河野選手はどうですか?」と言ってくれたみたいです。それでジムにオファーの電話がきました。でも、実はその前日に違うオファーが来たのです。
■それは誰ですか?
河野 香港でレックス・ツォーとやらないかという話でした。レックスは8000人の会場を超満員にしていて熱い試合をしていたので、自分も「もう一度熱くなれるかな」と戦いたいなと思っていたところでした。さらにアンカサスからも話が来ていました。そんなことを思っていたら会長から電話がかかってきました。井上君となら「もっと熱くなれるかな」と思いましたが、相手があの井上君ですから、一日考えました。それで決心を固めて会長に伝えたら「もう一回考えてみろ」と。
※レックス・ツォー(香港=元世界ランカー)、河野は井上戦後の17年10月に対戦し7回負傷判定負けを喫した。
※ジャルウィン・アンカハス(比=IBF世界スーパーフライ級王者)
■3人のうち、誰と戦うのかだったのですね。
河野 アンカサスの映像を見て「これは強いな」と思いました。ただ、一番知名度がある井上君とやりたいと思いました。妻からは、「井上君だけは本当に危ないし、事故が起こるかもしれないからやめて」と反対されました。