井上尚弥「今回は本来のスタイル。KOで決着をつける」ピカソ戦のその先へ。

　同席した、父・慎吾トレーナーは「状態は良い。サンドバッグを見ていてもスピード、タイミングどれも問題はない」と、尚弥のコンディションの良さをアピール。 「ピカソの土俵になれば打ってくると思うが、尚弥の距離で戦って徐々にダメージを与え、試合をコントロールしたい」と、挑戦者ピカソの至近距離での勝負強さに着目しながらも、尚弥への心配は見せず期待を語った。

 「今朝も映像を見た。ピカソの距離をインプットして、自分の距離でも相手の距離でもどちらも想定して準備し、ダラダラ打ち合う気はない。全然のムロジョン戦では判定になってしまった。今回は本来のスタイルで試合を組み立て最後にフィニッシュ。KO決着を狙いにいく」と、力強く語ると、試合決定直後から囁かれた、ピカソの力量不足について記者に問われると「前回のムロジョンや、来年の中谷選手に比べられると仕方ないが、ピカソを力不足とは思わない。KOで勝利することは常に背負って試合をしてきたので、今回の試合も同様。」と語ると、来年の対決が期待される中谷潤人(27=M・T)については「ファンは意識して見ると思うが、今回、双方の調子が悪くても本番は来年。来年の5月に向けてのモチベーションの作り方は相手も違う」と、目前の試合への意識の高さを伺わせた。

　ファンの記憶にも新しい先月11月24日に行われた、井上拓真(29=大橋)と那須川天心(27=帝拳)によるWBCバンタム級王座決定戦で、王座獲得に成功した弟・拓真を間近でサポートした尚弥は「自身のトレーニングをしながら拓真のトレーニングにも参加した。拓真が勝ったことで自分自身が抜け殻になると思ったが、逆にすごく刺激をもらいモチベーションが上がった」と振り返り、試合に向けて、一緒に汗を流し続けた弟からバトンを貰った胸の内を明かした。

　今回の試合に向けて、スパーリングパートナーに大谷新星(24=真正)とメキシコから3名の選手を迎え、80ラウンド以上のスパーリングを消化し、出発当日も大谷とスパーリングをすることを明かした尚弥は、日々の練習について「自分との戦い。その日の自分を超えていくこと。心拍数やラウンド数、気持ちの面や全てのトータルで自分を超える。時間数が多ければ良いわけじゃない」と話すと、「今回、拓真と一緒に練習した時に『お前は今まで何をやっていたんだ』と言った」と笑顔で話し、また「練習の質について気づけたが、遅いことはない。今回の練習をベースにすることで、天心戦以上のものを拓真が目指す」と練習の″質″について話した。
　
　最後に「サウジで、みんなの期待以上の試合をするためにトレーニングしてきた。楽しみにしてほしい。日本のトップが勢揃いし、全選手がレベルの高い技術を見せてくれて、世界に向けアピールできると思う」と話し、続けて「来年の5月の試合をイメージして、今回の内容を見てどっちが勝つか予想して、そういう見方でも楽しんでほしい」と、日本のボクシングのレベルの高さと、来年期待される中谷潤人とのビッグマッチについてファンの期待を煽り、囲み取材を終えた。

　大橋秀行会長は「リヤドがボクシングの聖地になっている。これが2回、3回と続き、年に1回は尚弥がリヤドに行く。日本のボクシングの強さ、美しさ、芸術的な技術とレベルの高さ見せたい」と、世界に向けて日本のボクシングへの魅力を届けたいと意気込みを語った。

　また、「普通ならありえない試合ペースだが、5月のダウンから一度もパンチをまともに貰ってなくダメージがないからこそ、このペースで試合ができる。アフマダリエフ戦で見せた試合をすれば、普通の選手ならKOで終わっていた。あのボクシングこそ井上の強さ。自分のボクシングで倒せたら理想」と話し、続けて「年齢を重ねるごとに練習が厳しくなっていて、自分との戦いをしている」と、尚弥の天井を見せない強さについても語った。