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期待通り、もしくは予想をはるかにしのぐ壮絶な主導権争いとなった王者・木村翔(青木)と3階級制覇を狙う田中恒成(畑中)のWBO世界フライ級タイトルマッチは、僅差で田中が新王者になる結果となった。ところで3度目の防衛に失敗した木村といえば、昨年7月に上海でゾウ・シミン(中国)から王座を奪取して以来、中国ボクシング界で絶大な人気を誇ってきたシンデレラマン。今回の王座陥落でもその人気は「落ちる兆しなど皆無だ」と現地のスポーツ記者たちは口をそろえた。
実は戦力を過小評価されている?
中国で抜きん出た木村人気の秘訣は「アルバイトで生計を立てながらのプロスポーツ活動を行うこと」が中国人にとって衝撃的だったこと以外に、少しずつ相手の戦力を消耗させる技術が、プロボクシング新興国の中国ではまだ高く評価されていないことにもありそうだ。歴史的な大番狂わせで、五輪連覇のゾウから11回TKO勝ちを収めた以降も、木村は2004年アテネ五輪経験者の五十嵐俊幸(帝拳)との初防衛戦、ハードパンチャーであるフロイラン・サルダール(フィリピン)との2度目の防衛戦で、「今度こそ負けるのではないか」と不安視する声が、中国では日本以上に多かった。それが勝利した際の反動で、日本人以上の感動を中国のボクシングファンに与えている要因になっていると、現地のベテラン記者も話す。
田中の存在感も高まった激闘
同じ記者は、ワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)と並ぶキャリア12戦の史上最短タイで世界王座3階級制覇を狙ってきたエリートの田中が、本サイトのユーザー投票によって出た[ 勝敗予想 ]で、木村戦を不利と予想されていることにも目を丸くして驚いていた。
1ラウンドも譲れぬポイント争いだった
今回の世界戦をインターネットなどで注目した中国のファンたちは、改めて木村を「勇者だ」と崇拝。田中の気迫や技術も高く評価され、「こんな凄まじい戦いを中国人同士ではいつになったら実現できるんだ?」と脱帽したコメントも見られた。
傷めた右手で涙も拭った試合後
木村本人は試合後、「すぐに再起したくなるような姿勢では取り組んでいない」という意味合いも加える形で「もうボクシングを続けたくない」と引退を示唆。それも一部の報道で中国には伝わっているが、インターネット上では「仮に辞めても、中国で指導者になれば、当分はアルバイトと無縁の生活をできる」など、いっそうこの日本人に惚れ込んだコメントを寄せている。