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昨年末に行われた五十嵐俊幸(帝拳)との初防衛戦前から、特別ゲストとして招かれることの決まっていた『WBO国際選手権』に出席したWBO世界フライ級王者・木村翔(29=青木)は、現地の中国でどんな存在であり、どんな可能性を秘めているのか。今回の滞在ではおぼろげながら、木村自身がそれを見いだせてきた様子だった。「中国で人気の日本人アスリート」といえば、誰よりも卓球界の福原愛選手が連想されるが、木村の才能はいかほどのものだろう。
朝食中に追っかけ選手が集まった
中国での木村は現時点で「格闘技界のカリスマ」の地位は確保している。それを超えた「国民的スター」までは知名度を高めてはいないが、現地のスポーツ記者は「ゾウがテレビのホームバラエティ番組でブレイクしたのを考えても、木村選手はもっと中国で熱心にテレビ番組に出演していけば、卓球の福原選手のように愛されるかも知れない」と推していた。
リングに上がっても観客が集まる
ボクシング界に絞って木村を見ても、昨年7月に抜群の勝ち組ボクサーだったゾウ・シミン(36=中国)からWBO世界フライ級王座を奪取したシンデレラ・ストーリーは、中国本土のみならず、台湾や香港、マカオ、さらには中華系移民の多いシンガポールなどにも関心を伸ばしている。今回、ゲストで招かれた試合会場でも「テレビで観たあの人だ!」と観客が押し寄せた一方で、同行した有吉将之会長に様々な商談を持ちかける関係者も少なくなかった。
CCTVの取材で歓迎への感謝を語った
この現状を確かめた木村は、その言動にも何らかの変化を伺わせている。大会パンフレットにサインを求められた際に「何かひとことメッセージを添えてください」と言われると、照れながら“日中親善”と記した。そして「人生でろくに勉強したことがなかったけど北京語だけは覚えてみようかな(笑)」と意欲を口にした。
さすがにちょっとお疲れな最終日
中国のプロボクシングは2013年に解禁されたばかりで、技術レベルも発展途上だが、昨年11月、元IBF世界フライ級王者アムナット・ルエンロエン(タイ)とのWBOオリエンタル・スーパーフライ級王座決定戦に勝利したグ・ウェンフェン(中国)など、木村にとって危険な選手も現れている。壮大なボクシング・フロンティアにおける木村はどう振る舞っていくのか。本人に聞くとスター候補は、チャーハンを豪快に頬張りながら「歴史にも記憶にも残る選手を目指しますよ」と約束した。一方で、1階級下のWBO世界王座を返上した田中恒成(22=畑中)が同級2位に食い込んでいるなど、日本人にとって興味深い対決が可能性を高めていることも我々は無視できない。