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[ショートインタビュー]2023.5.17

宇津木秀「ここから這い上がる」

 宇津木秀(29=ワタナベ)は、4月26日(水)に後楽園ホールで同級1位の仲里周磨(26=オキナワ)を迎えて3度目の防衛戦に臨んだが、3回KO負けで王座を陥落。1年2ヶ月保持した日本ライト級のタイトルを手放した。

 鉄壁のディフェンスと相手の弱点を突く巧みな試合運びで、長期政権を築くと期待されたライト級絶対王者の敗戦に驚いたファンも多いはずだ。

 試合後の囲み取材で、再起を明言した宇津木だったが、あの試合で何が起こったのか? 練習を再開した宇津木に改めて話を聞いた。
「悔しさがジワジワときている」
 「昨日、練習に行くか悩んだが、ゴールデンウィーク明けだから、ちょうどいいかなと思って」と、試合から3週間後の5月8日(月)、宇津木はジムワークを再開した。「練習に行っていない間は、映画を見たりして、試合のことは思い出さないようにしていた」。

 「アマチュア時代も負けたことはあるが、KO負けしたのは初めてだったので、ショックだった。負けた直後は実感が沸かなかったが、脳裏に焼き付いていて、2日後からジワジワきた」と心境を語った。
「試合前に考え過ぎてしまった」
 試合前は、宇津木に油断はまったく感じられず、調整も万全に見えて死角はないと思った。しかし、実際はそうではなかったようだ。「表には出さないが、今回は不安要素が多かった。練習でもしっくりいかないまま、試合に臨んでしまった。変に考え過ぎてしまって、当日もフワフワしてしまった。会場に入っても心ここにあらずというか。でも、チャンピオンだし、スイッチを入れないといけないので、ミット打ちして気合いは入ったが。なんでなんでしょうね…」。
「気がついたら倒れていた」
 いつもは冷静沈着に、相手の攻撃をしっかりと受け止めて、ジャブからじっくりと崩していく宇津木だが「気持ちが出すぎてしまった。体が軽くて腰が浮いていて『これはヤバいな』と。いつもは小林さん(小林尚睦トレーナー)のアドバイスが耳に入ってくるが、覚えていなくて。3ラウンド、相手の目の上を切り裂いたことで、欲が出てしまった。ちょこちょこ削っていけばいいのに、焦りから打ったところに向こうも研究しているから合わされた。気がついたら倒れていた」。
「自分のボクシングできなかった」
 試合後、周りからも『いつもの宇津木ではなかった』と言われたので、バレるくらい悪い動きだったんだなと。タイトルを取られたことより、自分のボクシングができずに負けたことがショックだった」と気丈に試合を振り返った。今回は、心身とも歯車がかみ合わなかったようだ。
「まだまだこんなものではない」
 しかし、気持ちは前向きだ。「ここで終わってしまうと、ダサいので終われない。男としてできるならリベンジしたい」と仲里への雪辱を誓うと、「再起戦で勝つまでモヤモヤすると思うが、その気持ちを持っておかないと上には行けない」。「少し遠回りになったが、コツコツとやっていくしかない」。

 「まだまだこんなものではない。これからですよ」と明るい声で練習に向かった。

 悔しい思いを糧に、さらに強くなってリングに戻ってくる宇津木に期待したい。

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