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WBO(世界ボクシング機構)世界フライ級王者のアンソニー・オラスクアガ(26=米国)が13日、両国国技館で開催された「U-NEXT BOXING 2」のセミファイナルで、世界3階級制覇を目指す京口紘人(31=ワタナベ)を挑戦者に迎えて、2度目の防衛戦に臨んだ。

近い距離で始まった初回、リング中央で前の手の差し合った。2回は左ボディを叩いた京口に対して、オラスクアガは右を振り下ろした。3回、オラスクアガはガードを下げて誘うが、京口は詰めずに中間距離に戻した。4回、近い距離での両者のアッパー、フック、ボディのせめぎ合いが緊張感を高めた。5回、ガードを下げたオラスクアガに対し、京口はガードを固めて前に出ると、右を大きく振り下ろして左フックに繋げたが、空を切った。6回、オラスクアガの鋭い右ストレートが飛び出したが、京口はブロックした。10回、ロープを背にしたオラスクアガに向かって、京口が右ストレートを強振。決定だとはならなかったが、タイミングは合い始めた。11回、交差したタイミングで両膝をついた京口にレフェリーがダウンを宣告した。ダメージは感じさせず、京口はすぐに立ち上がった。会場からはブーイングが起こった。最終回は、一歩前に踏み込んだ京口だが、相打ちでバランスを崩す場面もあった。

試合後、笑顔で会見会場に現れたオラスクアガは「KOしたかったが、時にはファイト、時にはボックスという日がある。今日はボックスをした日になった。キャリアで初めて12ラウンド戦いぬくことができたということに関しては、良かったと思う」と試合を振り返った。
京口の印象に関して、「京口には2階級制覇したチャンピオンとしての強さを見せてもらった。京口は自分が予測していた以上のパワーはなかったが、手堅いパンチを当ててくる印象で、もっとハードにくると思っていたところもあったが、そこは自分の予想を越えていた」と語ると、「必要があればファイトしていこう、自分がやりやすいようにボクシングしていこう、というのが戦略だったが、時にはプランBを出していかなくてはいけないこともある。今日はジャブがキーになった」と、試合を振り返った。

トレーナーのルディ・エルナンデス氏は「もちろん、良い勝ち方をしてほしかったが、彼に対しては、常に自分の期待値が高い。もっとファイトしてほしかったし、KOしてほしかったというのはあるが、試合の大部分で圧倒できてジャブが機能していたというところを含めて良かったと思う。もっとインファイトを見せられればよかったし、Fight of the nightと言えるような試合にしたかったが、しっかりとしたパフォーマンスを見せることで、ボクシングファンを増やすのも自分たちの使命だと思っているので、今日は勝てたということに関しては良かった」と愛弟子に注文をつけながらも、及第点を与えた。
その上で、オラスクアガは、「京口はもっと前に出てくると想定していた。実際に来てはいたが、自分がやりたいボクシングをしてジャブをもっと使いたかったというところを含めると、もっとインファイトをしたかったが、それはさせてもらえなかった。ただ、攻めてくるところにしっかり対応できた。KOできなかったのは残念だが、勝ちきってベルトが今は目の前にあるということは、自分にとってはGood jobであると思う」と自己評価をした。
エルナンデス氏は「京口がインファイトをしてくると思っていたが、してこなかった。挑戦者として、彼らがそういう戦い方を選んだのだと思った。自分たちと彼らの思惑が違う展開になったと思う。もっと魅せられる試合ができればお客様に、さらに喜んでもらえる試合ができたと思う」と、感想を述べた。
一息入れたチャンピオンは、「今後はWBOのリングを目指して、すぐにでも防衛戦をしたい気持ち」と念願のWBOのリングに対する思いと、防衛に対して強い自信を示した。

試合後会見の席に着いた京口は「今日はお忙しい中、会場に足を運んでくださったファンの皆さん、家族、スポンサーの皆さまに感謝をしたい」と、一礼した。「3階級制覇の壁は高くて、越えられるのかなと本当にそのくらいの壁だった。戦っていてチャンピオンは強かった。試合前は小林トレーナーと、とにかく空振りさせよう、前にくっついた時の展開というのを反復練習して、想定内のところはあったが、中盤以降のボクシング、ジャブの距離などは、本当にチャンピオンだったなという印象。キレもスピードもあった」と、オラスクアガを称えた。
「試合直前の練習で、ワンツーが良いということで、自分の中でワンツーは決め手になるパンチだった。当たったワンツーもあったが、もっと出したかった」と悔し気に試合を振り返った。
9ラウンドのダウンに関して、「ダメージブローのダウンではなかったので冷静だったが、『あー、とられちゃった』っていうそんな心境。肩のあたりをかすって、バランスを崩したスリップでもあるし、でもレフェリーに一番の権限があるので、そのレフェリーがダウンを宣言しただけのこと。それについては特に」と、さばさばと報道陣の質問に答えた。
会見に同席した 小林尚睦トレーナーは、「前半、京口もよかったので、中盤、戦い方を向こうが変えてきて、そこの対応ができなかったわけではないけれど、そこでこっちも戦術をちょっとだけ変えることができたら」と、悔しさを隠せなかった。

「世界のリングというのは、上がりたくても上がれないリング。自分は3階級チャレンジという舞台に立てて、リングを降りる時はコーナーポストからすごくいい景色が見えて…ただ、その時の自分はチャンピオンではなくて、そこだけは悔しいが心に焼き付けようと思った。色んなボクシングファンや陣営、皆がどうするんだって思っていると思うが、そこは自分自身を見つめて進退は決めたいと思うので、今は保留」と、進退については明言を避けた。
将来の世界チャンピオンたちにもメッセージを送った京口紘人、「世界チャンピオンになるのは、すごくむずかしいこと。今、将来、世界チャンピオンになるために練習している子どもがたくさんいると思うが、やることをやれば絶対にチャンスがくるっていうのが、いま自分が一番伝えたいメッセージ。いやぁ、でも、楽しかったですね。ボクシングは本当に素晴らしいですね」と、爽やかな笑顔を残して、両国国技館を後にした。