西田凌佑! バンタム級歴史的一戦から一夜明けて

　右肩を包帯で固定し、右目の腫れを隠すためサングラス姿で会見場に現れた西田は、2本のベルトを懸けて激闘を繰り広げた中谷と再会し健闘を称え合った。

「3〜4ラウンドは良い部分を出せた」

　「前に出る作戦で、武市さん(武市晃輔チーフトレーナー)からは『( 中谷選手が)前に出てくるだろう』と言われていた。最初から距離を詰めてくるのも頭に入れていたが、見すぎてしまい、飲まれた部分があった。ただ、3〜4ラウンドはスパーリングで磨いていた良い部分を出せて、自分でも手応えを感じた。後半に向けて体力を削っていきたいと思っていたが…。完敗したと思っている。言い訳はない」と語ると、「肩がどこで外れたかはわからなかった。動かせないことはないなと思いながら戦っていたが、途中から気づかれているのがわかり、6ラウンドを終えて、武市さんから『止めるか?』と聞かれて、『やります』とは言えなかった」。

　六島ジムの枝川孝会長は「結果を受け入れるしかない。奇襲攻撃で中谷選手が出てきたが、あそこまで出てくるとは思わなかったので、焦ったところもあったのではないか。ボディを嫌がって良いリズムになってきたので、このままいったらイケるかと思ったが、本来の冷静な西田ではなかったかな。しかし、こんなに大きな試合なので仕方がない。5ラウンドに急に動かなくなったので、どうしたと思ったら、肩が外れていて、6ラウンドには目もふさがってしまった。このまま続けるか本人は迷っていたが、私の判断で止めた。中谷選手の方が勝ちに対する執念があった。バッティングに関しては仕方がない。『バンタム級は、これで卒業』だと神様が言っているのかもしれない。西田はよくやった」と、最後まで諦めず観客の心を掴んだ西田の戦いぶりを褒め称えた。

　コンビを組む武市トレーナーは、「奇襲攻撃もあると思っていたが、可能性としては少ないと思っていたので『そうきたか』」と、中谷の攻撃は想定していたようだ。

　「1〜2ラウンドでダメージを負わずにコーナーに帰ってきて、『パンチも想像以上ではない』と言っていた。良い流れを作っており、9〜10ラウンドでまくれるぞと思ったが、バッティングで目が腫れたので『これは厳しいぞ』と思った。肩が外れたことは、一切言わなかったので気がつかなかったが、生命線の右のリードが少ないので、もっと出せと言っていた。6ラウンドに初めて言われた。クリンチで外れたのではないと思う」と語った。

　これまで不利予想を覆し、数々の強豪を撃破してきた西田だが、11戦目で初黒星を喫した。「中谷選手の方が勝つ気持ちが強かった。シンプルに悔しい」と、素直な気持ちを明かすと、「今後のことはじっくりと考えたい」と答えは出さなかった。

　大阪から乗り込んできた西田に対し、超満員の有明コロシアムでは地鳴りのような歓声が起こり、試合後も勇敢な戦いぶりに大きな拍手が送られた。「アウェーだと思っていたので、思っていた以上に声援が多くてうれしかった」と話すと、「もう少し頑張りたいなという部分もある。ただ、やるとしたらスーパーバンタム級になると思う」と、　現役続行に含みも持たせた。

「もう少し続けたい部分もある」

　「いずれ中谷と再戦したいか?」という問いに対し、「肩が外れたのは、減量の影響もあるかもしれない。タイミングがあれば再戦したい」と、気持ちは折れていないようだ。

　妻・沙捺さんは「ポイントを取れていたが、結果的に負けたので中谷選手が強かった。全力を出した結果。西田コールもあってうれしかった。よく頑張った。お疲れさまでした」と夫を労った。