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[コラム]2025.10.14

普通じゃないことが起きている『井上尚弥vs中谷潤人』

普通じゃないことが起きている『井上尚弥vs中谷潤人』

 普通ではないことが起きている。井上尚弥(32=大橋)と中谷潤人(27=M.T)による東京ドーム決戦までの『モンスターvsビッグバン劇場』のことだ。

 本来、挑戦者の立場にある選手からチャンピオンへ挑戦を訴えるのが筋だが、今回は逆だった。チャンピオンの方からチャレンジャーへ呼びかけがあったのだ。ライト級の王者たちが井上尚弥に「階級を上げて来い」と促した構図と重なる。

 ボクシングでは、次戦で対戦することを呼びかけ合うことがある。しかし、今回は違った。井上が3月31日に行われた2024年度年間表彰式の壇上で告げた言葉はこうだった。

「中谷君、1年後、東京ドームで日本ボクシングを盛り上げましょう」

 1年後を約束の舞台とし、互いに試合を重ねた上で必ず拳を交えるという前提の呼びかけだった。



中谷潤人(27=M.T)の成長

 呼びかけを受けたのは“ビッグバン”中谷潤人。「ぜひ、やりましょう」。突然の呼びかけに、中谷は一瞬、驚きの表情を浮かべたが、そう応えた。壇上で直接声をかけられるのは想像していなかったのだろう。しかし、次の瞬間には目が輝き、笑みがこぼれた。嬉しさとやる気が入り混じった微妙な感情が、会場の空気にも伝わった。他にもライバル王者が存在する中で、自分が選ばれたという井上からのメッセージが込められていたと、中谷は感じたのではないだろうか。このビッグマッチを、完璧な形で成立させるためにモンスターは、表彰式直後の囲み取材で「互いがベストを尽くして今年を乗り越えれば、日本ボクシング史で一番の試合になる。自分にも彼にも期待したい」と述べている。中谷には『普通に勝つだけでは、ファンの期待に応えられないよ』というメッセージを込めたのだろう。

2026年春は東京ドーム

 中谷は、全日本新人王、日本ユース、日本王者を経て、世界の舞台に名を連ね、フライ級からバンタム級までの3階級を制覇。井上がスーパーバンタム級に転級したため『焼け野原』となったバンタム級だったが、百花繚乱の戦国時代が幕を開けた。その中で中谷は、日本のファンが最も憧れる王道の系譜を継承――WBCの緑のベルトを腰に巻き、2団体統一も達成した。戦績は31戦全勝24KO。国内だけでなく、ラスベガスのリングでも高評価を得た。モンスターハンターとして申し分ない候補者に成長した中谷に、井上はあえて条件を示した。

 井上尚弥はこれまで、31戦全勝27KOという圧倒的戦績を築き上げ、バンタム級とスーパーバンタム級の2階級で、世界4団体統一を成し遂げてきた。それがゆえに「ライバル不在」とも言われてきた。だからこそ、井上は勢いある挑戦者の出現を待ち望んでいたのではないか。強者との対決を求めてやまない井上にとって、5歳年下のサウスポー中谷潤人の存在は大きい。

大興奮の中谷潤人vs西田凌佑

 表彰式の壇上で受け取った二人だけにわかる井上尚弥からのメッセージに、中谷は試合で応えた。他でもない、IBF王者・西田凌佑(29=六島)との世界2団体統一戦で。西田の得意な距離で最もリスクの高い戦い方を選び、意表を突いて打ち合いに持ち込んで、勝利を収めた。名実ともに井上尚弥の最大のライバルとして名乗りを挙げた瞬間だった。試合後、会見で中谷は「皆さんを含め、西田選手をびっくりさせたかった」と話している。

 プロ初黒星を喫した西田も、この試合で評価を上げたことは特筆に値する。日本ボクシング史に残るハイレベルな戦いだったことは言うまでもない。

 中谷は西田戦でリスクを背負い、井上の呼びかけに応えた。その姿に対し、井上は「合格」と告げる意味があったのではないか。

12ラウンド魅了し続けた井上尚弥

 この試合をリングサイドで確認した井上は、中谷の心意気に試合で答えた。名古屋IGアリーナで行われた元2団体統一王者、WBA暫定王者、そしてオリンピックメダリストでもあるムロジョン・アフマダリエフ(30=ウズベキスタン)戦でだ。試合前、井上は「どんな内容でもいいので勝つ」と語っていたが、その言葉通り、KOではなく12ラウンドを戦い抜き、判定で勝利した。試合後会見では「倒しにいかないことが、こんなに難しいとは思わなかった」と語り、一夜明け会見では「そのまま倒せるかといったらわからないが、何度か倒せそうな場面はあった」とも。アフマダリエフのスタイルと実力を考えれば、倒さず最後まで技術戦を貫くことこそ、むしろ最もリスクを伴う選択だったのではないだろうか。アフマダリエフのトレーナーは、井上尚弥がこの試合の前に戦ったラモン・カルデナス(29=米国)のトレーナーも務めている。そう、井上の手の内を知っている参謀が青コーナーに入っていたのだから、なおさらだ。

 もし、井上自身がそれを承知でこの戦い方を選んだのならば、そこには中谷へのメッセージが込められていたのかもしれない。

盛り上がってきた日本ボクシング

 数多のライバルが存在する中で、二人のトップが互いにリスペクトを示すような試合を経て、「約束の地」東京ドームで拳を交えることを改めて確認したように見える。

 その日が来るまでに、両者は最低でも一戦ずつをこなすはずだ。そして二人の対決はもちろんのこと、その前に訪れるライバルたちとの試合も、ライバルたち同士の試合もまた見逃すことはできない。

 既定路線を進めば12月、井上尚弥と中谷潤人は、サウジアラビアで競演する。


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