[引退式]2019.12.11
王道を駆け抜けた田口良一
田口良一(33=ワタナベ)
 先日、現役引退を発表した元WBA・IBF世界ライトフライ級王者の田口良一(33=ワタナベ)が10日、後楽園ホールで開催された「ガッツファイティング&DANGAN231」で引退スパーリングを行い、同ジム時代の先輩でWBA世界スーパーフェザー級王座を11度防衛した内山高志氏の胸を借り、ボクサーとして最後の雄姿を見せた。
ラストスパーは内山高志氏が相手
 この日のために体を作り上げてきた内山氏に対し、田口はジャブをダッキングでかわすとワンツーフックで攻め込んだ。続けて右ストレートを好打し、一瞬、KO賞金300万円の期待が膨らんだが、そこは百戦錬磨の内山氏。すぐに左ボディを返し、田口を後退させた。2回は軽くワンツー連打を打ち込んで余裕を見せる内山氏に、田口は地団駄を踏んで悔しがる。すると最終3回は両者ともヘッドギアを取り去り、マジ対決。田口は果敢に攻め込むが、内山氏は後輩の晴れ舞台でも手を抜かず、抜群のディフェンスでまともなヒットを許さなかった。
WBA・IBF統一世界王者 田口良一
 終了後に行われた引退セレモニーで内山氏は、「現役お疲れさまでした。僕がリスペクトする後輩なので、2日間禁酒し、体重を5kg落としてきました。これだけ多くの人が会場に訪れたのは、田口の人柄があってこそ。田口の第二の人生を応援してやってください」とエールを送り、ラーメンが好きな田口に一年間食べ放題券の副賞を贈った。
渡辺均会長
 続けて、叩き上げの田口を支え続けた渡辺会長が挨拶に立ち、「田口が世界を獲った14年大晦日の試合が一番の思い出。期待に応えてくれて嬉しかった」と感謝し、フィットネスジムの開設を目指す田口と握手をかわした。
笑顔。
 最後にマイクを握った田口は、「世界チャンピオンの夢を持って18歳でボクシングを始め、怪我によるブランクで挫折した時もあった。でも、皆さんの応援があって世界を獲り、2団体を統一することができました。本当にありがとうございました」と、時折声を詰まらせながら感謝の言葉を述べた。「今後は自分もボクシングに携わり、この業界を盛り上げていきたい」と新たな夢を語り、「後輩たちの応援をよろしくお願いします」とファンに願った。
10カウント
 06年4月にプロデビューし、13年4月に日本王座を獲得。同年8月の初防衛戦で井上尚弥(大橋)に敗れたが、14年12月にWBA王座を獲得し、7度の防衛に成功した。17年12月にはIBF王者ミラン・メリンド(比)との統一戦を制し、リング誌のベルトも獲得。しかし、昨年5月にヘッキー・ブドラー(南アフリカ)に敗れて王座から陥落し、階級を上げた今年3月の再起戦でWBO世界フライ級王者の田中恒成(畑中)に挑戦したが世界王座への返り咲きはならず、これが最後の試合となった。
 生涯戦績は33戦27勝(12KO)4敗2分。新人王、最強後楽園、日本王座、そして世界と王道を駆け抜けた田口は、13年の現役生活に幕を下ろし、新たな夢に向け歩みをはじめた。