[香港便り]2018.3.17
振り返れば「香港のラムちゃん」がいる
筋力トレーニング後の香港島にて
 長年、その地域に染みついた「ボクシング不毛」の定説を覆して、昨年はレックス・ツォー(30)の快進撃が大ブームとなった香港ボクシング界。「最近はどうなの?」と思っている関係者もいるかもしれない。たしかに昨年10月、レックスが元世界王者・河野公平(ワタナベ)戦に7回負傷判定勝ちを収めたものの、腫れ上がった左眼を理由に長期療養となり、ボクシング興行が滞っているのだ。それでもプロモーターのジェイ・ラウ氏は、数人のお抱え選手に、レックス・ブームの継承を担わせようとしており、その中には淑女系大学生のサンディ・ラム(25)がいる。
鋭い音感を持つ才女
 元々、ジェイ氏はモデル業をこなす後藤あゆみ(29=ワタナベ)の招聘に熱心だったように「香港には腹筋を割りたくてフィットネスジムに通う女性が増加している。彼女たちのリーダーになるような女性を手がけたい」という構想があった。
 その一翼を担わせたいサンディは嶺南大学に通う社会学部の生徒。幼少期から武術をやっていたとはいえ、ジャッキー・チェンのような演武であり、どちらかといえば楽器演奏に夢中な芸術家肌であった。
プロでは現在3勝1KO1敗
 しかし「コンプレックスだったメンタル強化につながるし、こんなに集中できることはない」と没頭し始めたのがボクシングだ。2013年と2014年には51kg級で香港選手権を連覇。プロ転向後も着実にキャリアを積んでいる。
女子の憧れは小関(左)。男子はまさかの?
 ハートの強いボクサーに惹かれるそうで、憧れの選手には先日引退した元2階級世界王者の小関桃を挙げた。ボーイフレンドのいないサンディに「男子でアイドルはいる?」と尋ねてみると即答したのは「モンスター!」。そう、日本が世界に誇る井上尚弥(24=大橋)だった。
今月にはバンコク遠征でTKO勝ち
 でも、この香港のDEFプロモーションにとって井上は…、看板選手のレックスが世界1位で指名挑戦権を得ても戦わなかった王者であり、さながらタブーの存在に思えていたが…(井上は指名試合でも2位のロドリゲスと対戦した)。「空気を読めていない感」も無邪気なサンディの魅力かもしれない。ちなみにサンディは井上が妻子持ちであることを知らなかったようで、インタビュー中に「それはショック!」と絶叫していた。