立ち上がりスピードに乗る長谷川に対し、ゴンサレスは左のロングフックを狙っていたという。試合が動いたのは3ラウンド。ゴンサレスのセコンドについた名伯楽ナチョ・ベリスタイン氏は「長谷川がゴンサレスの左を警戒していたので、3R以降は右を狙わせた」と試合後の会見で話した。

　長谷川と戦った印象を聞かれた新王者は、「スピードがあってクレバーなボクサーだった。パンチは強いとは思わなかったので、積極的に前に出て行くことができた」と話し、「4ヶ月間の練習の大成果が出せてとてもうれしい」と喜びを語った。ダウンを奪った右のパンチについては、「左ほど練習はしていなかったが、セコンドからの指示で右を狙った」。また、「(ダウンを奪った瞬間は)倒れ方を見て、試合が終わったと思った」と淡々と試合を振り返った。

　今後については、「長谷川のような最強といわれる選手とやりたい」と抱負を語り、具体的には、(WBA/IBF王者)ガンボアや(WBO王者)ロペスをはじめマルケスやバスケスといったこの階級のトップ戦線を走る選手の名前を口にした。

　控室に戻った長谷川は、しばらく報道陣をシャットアウトしたが、15分ほどして会見に臨んだ。さすがにショックの色は隠せなかったが、しかし、真摯にしっかりと言葉を選んで答えた。
　「倒された右のパンチは見えなかったので効いた。実際のところ何をもらったのか分からなかった。ダメージはあった。自分ではまだできると思ったけれど、レフェリーが判断することなので…。左は注意していたけれど、右に対する注意は十分ではなかった。ゴンサレスはやりにくいリズムはあったけれど、ちょっとずつ分かってきたところだった。ポイントでリードしていたといっても、所詮は途中までのポイント。ボクシングはKOがあるので。ボディを攻めて終盤勝負と考えていたが…悔しいけど、負けたのは自分が弱かったから」。

　話が進退に及ぶと、慎重な言い回しで即答を避けた。「仮にやるとしても相当な覚悟がいること。簡単に『やる』と言えるほど甘くないことも分かっている」。
　最後はショッキングな敗北直後にも関わらず、被災地への詫びを口にした。「東北の方々に申し訳ない気持ちでいっぱい。(粟生、西岡ときて)自分が最後を締めたかったのに」。
　 　後は山下正人会長が話を引き取った。「負けたのはトレーナーである自分の責任。長谷川は自分のボクシングをしていたし、よく戦った。こちらがゴンサレスの左にばかり注意していたのは事実」。
　1年前に続く2度目のTKO負け。今後に関して、長谷川はどんな結論を出すのだろうか。