これは岩佐を6年前からスポンサードし、自動車部品ブランド「LYZER」を運営する(株)ワールドウィング中川貴之代表取締役が世界チャンピオンになった暁にはフェラーリをプレゼントすると約束していたもので、車両価格は3000万円。日本チャンピオンになってから購入したベンツSLのほか、日常の足としてハイラックスを所有するほどの車好きの岩佐は、フェラーリのオーナーになることは世界チャンピオンになるのと同等の夢だった。

　夢の車を手にした岩佐は、「ぶっちゃけ、練習中も試合中もフェラーリが心の支えだった。これだけの人参をぶら下げられたから辛さに耐えることができた」と話し、事実、4ラウンド後半から5ラウンドにかけて小國が巻き返してきた時には、「フェラーリがなかったらヤバかったかも」と明かした。

　試乗し、跳ね馬の奏でるエキゾースト音に酔いしれると「これで海沿いを走りたい」と頭のなかはすでにドライブモード。だがその反面、「オーナーになったプレッシャーが凄い。今住んでいるマンションのランクを下げてでも屋根付きの駐車場を探さないと。ベルトを失ったら維持できない」と新たな不安も。それだけに「小國さんから奪ったベルトを必死で守り、フェラーリも維持していく。もう今までみたいにヘラヘラしていられません」と夢を叶えた先の責任感が岩佐に芽生え始めていた。