[試合後会見]2015.10.23
まさに女子の起爆剤!
1Rのダウンシーン。足元に注目
 22日、後楽園ホールで開催された「第56回 フェニックスバトル」のセミファイナルでは、女子ボクシング界待望の黄金カード、WBC・WBA女子世界アトム級(ライトミニマム)級王座統一戦が行われた。かねてからライバルと言われていたWBC女子アトム級王者・小関桃(33=青木)とWBAライトミニマム級王者・宮尾綾香(32=大橋)の一戦は、両者の応援団による大声援で始まったが、初回に宮尾の左フックで小関がダウンを喫するという予想だにしない展開でスタートを切った。
判定の瞬間
 2ラウンドにも宮尾の右ストレートで鼻血を流しペースを取られたかに見えた小関だったが、ここからプレスを強め左ストーレートで宮尾の顔を弾く場面が増えた。出入りのボクシングをしたい宮尾だったが、パンチは単発になり小関が流れを引き戻した。5ラウンド終了時の公開採点は三者ともに47-47のイーブン。後半になっても小関の気迫溢れる攻めが勝り、ポイントを奪い続けた。劣勢の宮尾は前に出て右を決める場面もあったが、小関の左のヒット数が勝負を印象づけた。ジャッジは1者が1ポイント、2者が3ポイント差で小関を支持。セシリア・ブレークフス(ノルウェー)の持つ16度目の女子世界最多防衛記録に並ぶとともに2本のベルトを統一した。
真の王者へ
 控室に戻った小関は「WBAのベルトは重いですね」と勝利した喜びよりも安堵の表情。「これまで戦ってきた外国人選手と違って気持ちが強かった。中盤から目の色を変えて攻めてきて根性があると思った。自分としては技術的には良い試合でなかったが、最後まで攻めることができた。そういう相手とやることができて良かった」と死闘を繰り広げた宮尾に感謝の意を示した。キャリア初のダウンを喫したが、「最初はスリップかなと思った。2ポイント取られてしまったが焦りはなかった」「今までチャンピオンと言われてもピンとこなかったが、宮尾選手に勝てたことは本当にうれしい」と喜んだ。今後のことについては「この試合にすべてを賭けていたので今は考えられない」と明言を避けた。
宮尾はたくましく
 一方、3年間保持していたWBAのベルトを明け渡す形となった宮尾は、「5回防衛と15回防衛の差が出たかな。悔しい」と無念千万の想いで会見に臨んだ。「小関選手は想定していた通りにやりにくい。圧力が強かった」と小関の強さを素直に認めた。しかし、「練習したことを出すのは難しかった。ただ、負けたけど試合をしていて楽しかった。良い経験になったのでこれを次に生かしたい」と早くも前を見据えていた。
藤岡、柴田、富樫さんも両者を称えた
 この試合には多くの女子ボクサーが観戦に訪れた。4日前に3階級制覇を成し遂げたWBO女子バンタム級王者・藤岡奈穂子(40=T&H)は「小関選手の気合いが空回りして最初はダウンを取られたけど、そこから目が覚めた。宮尾は桃の左に押されてしまった。足を使わせないプレスが素晴らしい。2人の戦いぶりに感動した」と両者の健闘を称えた。11月13日に4度目の防衛戦を控えているIBF女子ライトフライ級王者の柴田直子(34=ワールドS)は「もっとポイント差がついているかなと思った。1Rが終わった時に小関が捕まえると思った。両者の迫力を感じた。私も続きます!」と力強く語った。かつて女子ボクシングを支えた元WBC女子ライトフライ級王者の富樫直美さんも観戦し、「最初は小関選手らしくない戦いだなと思ったが途中から小関選手の流れになった。宮尾選手も素晴らしいファイトで良い試合だった。女子ボクシングがもっと盛り上がってくれたら」とエールを送った。
世界への飛躍に期待!
 この日の興行では、第5試合に世界4団体でランクされ、来年の世界挑戦を目論む松本亮(21=大橋)が登場。初回から格の違いを見せつけるようにセンサックを圧倒。2ラウンドに左フックでダウンを奪い、粘る相手に4、5ラウンドにダウンを追加して危なげなく勝利を収めた。
「ダメですね。1発効いたパンチをもらったし、ガードばかりしてくる相手に攻めあぐねてしまった」と反省の弁が口をついた松本だが、「ムキにならずに冷静にボディを攻めることができたのは良かった」と手応えも感じていたようだった。「年内にもう1試合できたらいいがそれは会長が決めること。いつでも試合ができるよう準備しておきます」とさらなる飛躍を誓った。