王者になるために来た

　山中慎介(30=帝拳)の持つWBC世界バンタム級王座に挑戦する同級2位ホセ・ニエベス(32=プエルトリコ)が7日、都内の帝拳ジムで報道陣に練習を公開した。山中対ニエテスは12日、大田区総合体育館で行われる。

　耳からアゴにかけて短い髭を蓄え、左右の腕にはタトゥーが彫られた不敵な風貌。左右の耳にはピアスが光る。報道陣を前にした会見では椅子に深く座り、足を投げ出したり組んだり、あるいは貧乏揺すりをしたりと、落ち着きがない様子だった。カリブ海からやってきた32歳の挑戦者は一見すると不遜とも思える態度だったが、会見が始まると折々で愛らしい笑顔を浮かべた。

「日本はプエルトリコと気候が似ていて素晴らしい国だけれど、試合のために来たのだから観光はしていない」と、まずはジャブを飛ばした。山中のことに関して話が及ぶと、今度は表情を引き締めた。「テクニックがあって能力もポテンシャルも高い選手。戦っていないので分からないけれど、たぶん左が主武器なのだろう。スピードもあるし、爆発的なパンチを持っている」と、王者を高く評価した。

　ホセ・ボニージャ・トレーナーも「山中は特別に優秀な選手。クレバーで瞬間的な爆発力もあり弱点は見当たらない」と王者を持ち上げたうえで、「でも、ニエベスも万全の態勢なので、質の高い試合になるだろう」と、愛弟子に期待を寄せた。

　前日の山中同様、ニエテスもスパーリングは行わず、シャドーボクシング、サンドバッグ打ち、ロープ跳びをインターバルを含めて各20分ずつ、合計で約1時間、汗を流した。サンドバッグに叩き込むパンチには迫力が感じられず、同じサンドバッグ打ちでも前日の山中とはパワーの点で決定的な差があるように見受けられた。上体はみごとに発達しているがアゴとボディは細く、耐久力の点で不安を感じさせた。練習を見た帝拳ジムの浜田剛史代表は「相手は動く選手なので、そういった意味でもボディは攻めてみる価値があるでしょう」と攻略の糸口を見つけたといわんばかりだった。

　このあと山中とニエテスは一日おいて9日に予備検診、10日に調印式、そして11日の計量を経て12日にリング上で対峙する。