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[試合後取材]2026.5.9

森脇唯人が掴んだ初戴冠。東京ドームで証明した適応力

森脇唯人が掴んだ初戴冠。東京ドームで証明した適応力

 東京五輪ミドル級代表の実績を持つ森脇唯人(29=ワールドスポーツ)は5月2日、東京ドームで開催された「NTTドコモ presents Lemino BOXING ダブル世界タイトルマッチ」で、OPBF東洋太平洋・WBO-AP統一王者のユン・ドクノ(30=韓国)に挑戦し、2-1の判定勝ち。プロ転向3戦目で新チャンピオンに輝いた。

 昨年12月の初対決では、初回にダウンを奪いながらも4回負傷引き分け。消化不良とも言える結末に終わった因縁のカードは、東京ドームという大舞台で再び実現した。

 接近戦と離れ際の攻防が入り乱れ、決して綺麗な展開ではなかった。それでも、森脇は最後まで冷静だった。五輪仕込みの技術だけではなく、泥臭く流れを引き寄せる執念も見せて勝利を手繰り寄せた。
「ベルトを獲った実感はまだ湧かない」
 試合から数日が経った現在も、本人にはまだ実感が薄いという。「まだ手元にベルトがないのと、これまでオリンピックボクシングを10年以上してきたので、チャンピオンからベルトを奪う、挑戦者に獲られるという概念がなかったので、まだチャンピオンになった実感が湧かない」と胸中を明かした。

 アマチュアとプロの価値観の違い。その戸惑いが率直な言葉に表れていた。
プロ3戦目で戴冠
 採点が割れた瞬間には、独特の緊張感もあった。「(ジャッジは)そう見えているのかな?  やっぱりそうだよな」と感じた一方で、「負けはないと思ったが、もしかしたら…」という思いも頭をよぎったという。

 それでも、森脇はベルトを手にした意味をしっかり理解している。「内容はともかく、手元にベルトがあるのとないのでは、この先違ってくるので」と静かに言葉を続けた。
相手の距離で戦い競り勝った
  「まだまだ課題もあるが、シンプルにユン選手が気持ちが入っていて強かった」。

 実際、ユンの独特なリズムに苦しめられた。距離を潰し、密着しながら流れを寸断するスタイル。森脇自身も映像を見返す中で、その戦略性に気付かされたという。

 「ユン選手からすると、対森脇に対し(距離を潰すのが)安全圏内だったのでは。自分もドスンというパンチは打てないけど、密着してしまえばお互い様だよねと。安全圏内でコツコツポイントを取る戦いをしてきたんだろうなぁと、映像を見返して気が付きました」と分析した。
試合後、東京ドームでの戦いを実感
 東京ドームという特別な舞台については、試合中よりも試合後に実感が湧いたという。「東京ドームのリングは、今振り返るとすごいなと思うのですが、やっている時はリングの中でのことに必死なので、いつも通りに緊張した。東京ドーム興行のアンダーカードに入れてもらった実感や満足感は後からジワジワきた」と試合中よりも試合後に実感が湧いたという。

 試合後には、これまで応援してくれていた関係者だけではなく、初めて自身の試合を見たファンからも多くのメッセージが届いたという。東京ドームの舞台は、森脇という存在を一気に広げた。
「オーストラリアの選手と戦ってみたい」
 今後については、アジア圏に留まらない視線も見せた。「タイやフィリピンの選手をなめているわけではない」と前置きした上で、「できるならオーストラリアの選手とできれば。ただ、なかなか向こうの選手が挑戦してこないのは、そもそもOPBFやWBO-APに興味がないからなのか。上を目指す上でやりたい」と語り、さらなるレベルアップを見据えた。

 試合映像は父と何度も見返しているという。その中で、印象的な言葉を掛けられた。「ユン選手はリズムがなくて、やりにくいタイプではないか。前回も今回もグダグダな展開になったが、次は楽に感じるかもしれない。彼との試合だけを基準に全部を反省する必要はない。やりにくい相手とやれたこと自体が大きな経験と言われて、そうかと思った」と振り返った。

 圧倒的な勝利ではない。だからこそ価値がある。

 噛み合わない相手、崩れるリズム、東京ドームの重圧。そのすべてを経験した上で、森脇唯人はプロ3戦目にしてベルトを掴んだ。

 五輪戦士のキャリアは、ここから本格的にプロの世界へ踏み込んでいく。

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