試合日程 | 試合結果 | 動画ニュース | ランキング | 選手検索 |
WBO(世界ボクシング機構)スーパーフライ級王座決定戦が24日、両国国技館で行われた。赤コーナーからリングに上がったのは、世界4階級制覇に向けて、3年2ヶ月ぶりの世界戦に臨んだ田中恒成(28=畑中)。青コーナーには、クリスチャン・エドゥアルド・バカセグア(26=メキシコ)が陣取った。
初回から近い距離で、早いリズムでジャブを突いて探り合った両者。バカセグアは、テンポよく右ストレートと左ボディをコンパクトに打って、プレスをかけた。折り畳んだ肘から放たれるバカセグアのパンチは、リーチの長さを印象つけた。偶然のバッティングで、バカセグアの右目の辺りにドクターチェックが入った5回、両者は接近戦でボディとアッパーを打ち合った。試合が動いたのは8回。田中が右ストレートを連続で打ち下ろすと、顔面を被弾したバカセグアが、キャンバスに手をついたタイミングでレフェリーがダウンを宣告。その後も冷静にヒットアンドアウェイとサイドステップでペースを掴んで、的確なボディでポイントを稼いだ。最終回、ヒートアップした超満員の両国国技館のファンが見守る中、右ストレートの打ち下ろしを連打して仕留めに行ったが、バカセグアも踏ん張って試合終了。田中が判定勝利で、世界4階級制覇を果たした。
「応援ありがとうございました。3年2ヶ月の苦しい時間があって、3年ぶりの世界戦で勝てて嬉しいはずなのに、満足できてない自分が嬉しいです」。続けて、「スーパーフライ級で、4団体統一と井岡一翔選手(志成)へのリベンジ。IBF(国際ボクシング連盟)のフェルナンド・マルティネス(32=アルゼンチン)に勝ってから、2本のベルトを持って井岡さんにリベンジしたい」と、井岡への「リスペクト」を強調して、満面の笑みを浮かべて、今後の目標を掲げた。
試合後の会見場にベルトを引っ提げて登場した田中だが、念願の4階級制覇達成にも「KOで勝ちたかったです。ブロックすることや避けることはできたが、今日の相手に大切だったのは、好きに打たせないこと。この点は、反省点が残る試合内容になった」と、反省の弁が先に口をついた。
「アッパーや右ストレート、良いカウンターを何度か当てられたが、自分自身のバランスが押し込まれて崩れたり、そういうことがなければ、もっとカウンターを打つチャンスがあったと思う。相手は思っていた以上に打たれ強かった。なので、一発で、というよりはコツコツパンチを重ねてダメージを与えて、相手に打たせないことでメンタルも削りたかったが…。そういう後半の方の削り方が、なかなかうまく出来なかったといった辺りが課題」と、全く満足した様子はなかった。「足りなかったことは、相手に接近戦でも打たせない、相手のバランスを崩すこと、自分のバランスを崩さず、打つ一つ前にパンチを出して出鼻を挫くことだった。相手の攻撃の止め方は、足を使うだけではなく、たくさんあったと思う」と続けた。
それでも、3年2ヶ月ぶりの世界戦を勝利で飾ることができたのは、誇るべきこと。「成長していた点は、落ち着いていたところ。緊張したり高まったりすることはなく、普段通りでリング上にいた。3年ぶりで一番興奮する舞台だと思うが、一番落ち着いていた。落ち着いていたので、色んな選択肢が自分の中で見えていた」と自身の成長ぶりを実感。「途中、ボディが効いていたので、ボディを狙いながら、それでも倒れない相手に、今度は細かく上を打ってからボディを打つとか、相手が慣れてきたら、足を使いながら顔面への細かいパンチを集めてダメージを重ねていくとか」とリングを振り返った。
WBA(世界ボクシング協会)チャンピオンの井岡一翔(志成)への想いも語った。「IBFのフェルナンド・マルチネスは強いので、この選手を倒して、自分の強さを証明すること。その上で1本ではなく、2本懸けて戦うこと、そのくらいのものを懸けて、初めて戦いたい。『リベンジさせてくれ』と言いたい」と熱い気持ちを伝えた。
試合後の会見でバカセグアは「今日はいい試合だったと思う。本当に好戦的な2人が戦った試合でした。私は持っているものを出し切りました。残っていることは、何もないです。残念ながら結果はついてきませんでしたが、別のチャンスを探したいと思います」と試合を振り返った。
田中に関して「良い選手でした。3つのベルトを持つチャンピオンでしたし、本当に好戦的なチャンピオンですので、彼のキャリアを尊敬します。私は別のチャンスを探しにいきます」。疲労の滲む、やや気落ちした表情を浮かべて会見を終えた。