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22歳にして世界2階級を制した偉大な兄を持つ井上拓真(19=大橋)が、6日の後楽園ホールで初のタイトル戦となる空位のOPBF東洋太平洋Sフライ級王座に挑んだ。対するは、前回の来日で2度の世界挑戦経験のある向井寛史(六島)を2回KOに沈めた同級2位のマーク・アンソニー・ヘラルド(比)。23歳とまだ若いながら、5戦目の拓真を大きく上回る39戦(31勝14KO5敗3分)のキャリアを誇るサウスポーの強打者とあって、ボクシングファンの注目を集めた。
拓真の左がめりこむ
試合は、先手で攻めた拓真が速いジャブからノーモーションの右に繋げ、立ち上がりから距離を掴み組み立てが、タフなヘラルドも臆せずに左を振るい続け、拓真の追撃を阻みチャンスを窺った。8回までの途中採点は、拓真が79-72、79-72、80-72と大差でリードしたが決定打に恵まれず、終盤は焦りからかジャブが少なく荒さが目立った。すると最終12回、追い上げるヘラルドの左が打ち合いの中で先にヒットし、拓真が思わず手をつきダウン。立ち上がりダウンじゃないとアピールしたが認められず。それでもラストは前に出るヘラルドを迎え撃ちゴング。実力者を相手に初の12回を戦い抜いた拓真は、最大7ポイント差の判定勝ちを収め、兄と並ぶプロ5戦目でのOPBFタイトル獲得に成功した。
ちょっとだけ強がってみせたヘラルド
敗れたヘラルドは、控え室での会見に応じると、前戦で自身が判定負けを喫したIBF1位のマックジョー・アローヨ(比/今月18日に空位のIBF世界同級王座に挑戦)と比較し、「彼も強かったが拓真も強い。十分に世界を狙える」と称えた。特に左ジャブとスピードを評価したヘラルドだが、「効いたパンチはなかった」と右のパワー強化を注文つけた。
拳を心配する大橋会長
一方、中盤以降に痛めたという左拳を冷やしながら会見の臨んだ拓真。最後まで相手を崩せなかった内容に多くの課題を上げたが、長丁場のきつい試合を制して勝ち獲ったベルトだけに素直に喜びを感じていた。12回のダウンについては、「効いて倒れた訳じゃない。左フックで体を回されただけ」と改めてダウンを否定。何度も相手の左肘が口元に当たっていたらしく、腫れた上唇を気にしていた。
大橋秀行会長
拓真の世界挑戦について大橋秀行会長は、「不用意にパンチをもらわないことと、一発が当たった後の返しのパンチが打てるようになれば世界は確実。これだけの強い相手に勝ったのだから、それさえクリアすれば間違いない」と太鼓判。ただし、兄・尚弥と同じ6戦目での挑戦は「焦る必要はない」と見送り、まずは防衛戦(指名試合)を行う意向を示した。
父・真吾トレーナーと
兄弟チャンピオンを育て上げたトレーナーの父・真吾氏は、喜びと不満が半々といった様子だ。「見過ぎてしまうのは拓真の悪い癖。(倒す)チャンスは3回ぐらいあった」と指摘すると、拓真も素直に「ハイ」と頷いた。兄・尚弥はさらに辛口で、「今日の実力は半分程度。スピードで上回っているのだから、もっとプレスを掛けるべき。仮に世界に行けてもこの試合じゃインパクトに欠ける。倒せなくてもプロとして見せ場は必要」と世界王者として厳しい言葉を並べた。
身内のハードルが高く、気の毒な気もしてしまう拓真だが、本人は「兄や父の言うとおり。世界を一発で獲れるように新たな課題を克服するだけ」と前向きに捉えていた。
身内のハードルが高く、気の毒な気もしてしまう拓真だが、本人は「兄や父の言うとおり。世界を一発で獲れるように新たな課題を克服するだけ」と前向きに捉えていた。