日本最重量級王座の行方

　この7月、日本ヘビー級王座は1958年以来55年ぶりに復活。そのベルトを決定戦で獲得した藤本京太郎(27=角海老宝石)が25日、1位の指名挑戦者、竹原虎辰(35=緑)を相手に後楽園ホールで初防衛戦に臨んだ。藤本が日本最重量級のベルトを守ったのか、それとも王座の持ち主が変わったのか。

　馬力で勝る竹原が前進、それを藤本が足をつかいながら迎撃するという予想どおりの展開となった。最初にチャンスをつかんだのは藤本。3回に右のカウンターを合わせて挑戦者の膝を揺らしたのだ。しかし、その後は見栄えのよろしくない展開が続くこととなった。愚直に前に出る竹原を藤本は足とワンツーで迎え撃つのだが、その直後にクリンチを繰り返したのである。最重量級の試合だというのに、インターバルを機に席を離れて帰路につく人がいたのは残念だが、仕方あるまい。試合後、藤本自身が「自分でも(客席が)白けてしまったのが分かった」と明かしたほどだ。それでも身内の大声援を受けた両者は比較的淡々とラウンドを重ねていった。終盤に竹原が単発でパンチを当てたが、そのたびにクリンチで追撃は断たれた。採点は97対93、96対94、97対94の3-0で藤本。王者の戦術勝ちというところか。

「(藤本は)ウィービングが巧みで、こちらの左フックが当たりませんでした。足とクリンチを多くつかってきたので後半に動きが落ちるかと思ったけれど、疲れなかったみたいですね。実力差です」と淡々と試合を振り返った。この試合に備え竹原はオーストラリアで10日間に30ラウンドのスパーリングを積んだが、結果には結びつかなかった。21戦9勝(4KO)9敗3分の35歳は、今後については「(緑ジムの松尾敏郎)会長に任せます」と話した。

　一方、必ずしも芳しい内容とはいえない試合だったが、無難に初防衛を果たした藤本は「(竹原は)人生をかけてきたので、まるでゾンビみたいでした」と、相手を形容した。自身は過去最高量のトレーニングを積んで調子そのものはよかったという。「どうにかして勝とうと思ってクリンチをしました。負けられない試合だったので、勝っただけで満足です」とホッとした様子だった。今後に関しては「話し合ってから決めます」としながらも「もう1回、東洋太平洋にも挑戦したいし世界ランクも狙いたいので、もう日本タイトルはいいかなと思います。ヘビー級の役割は果たしたと思うので」と日本のベルトには執着がなさそうだった。ヘビー級王座が復活した際には「僕のための王座」と大歓迎した藤本だが、2戦だけで卒業とはちょっと寂しい。もっと日本のベルトにこそクリンチ(執着)してほしいところだ。9戦8勝(5KO)1敗。