「作戦どおりの戦い」

　フライ級の日本人対決の結末は―。8日、東京・両国国技館で行われたトリプル世界戦のひとつ、WBC世界フライ級タイトルマッチは両者流血の壮絶な戦いとなった。サウスポーの五十嵐俊幸(帝拳)がスピードとテクニックを生かして王座を守ったのか。それとも八重樫東(大橋)がミニマム級から飛び級で2階級制覇を成し遂げたのか。

　控え室に戻った新王者は開口一番「作戦どおりの試合ができました」と嬉しそうに話した。愛弟子の勝利に大橋秀行会長も手放しの喜びようだ。

「最初の採点公開でフルマークがひとりいたので安心しました。八重樫はサウスポーが苦手で、スパーをやっても全然ダメだったので張正九(韓国)がイラリオ・サパタ(パナマ)というサウスポーのテクニシャンをKOした試合を見せました。そしたら変わりましたね。試合の1ヵ月半ぐらい前のことです」と研究の成果が出たことにご満悦だった。

　その話を八重樫が引き取って続けた。「それで今回は下から入って潰しにかかるコリアンファイター・スタイルで行こうと思ったんです。でも五十嵐の闘志がすごくて仕留められませんでした。ベルトよりも五十嵐へのリベンジの意味合いが強い試合でした。周りの皆さんのサウスポー対策やフィジカル・トレーニングがなければ勝てない試合でした。感謝しています」

　敗れた五十嵐は、意外なほどさばさばしていた。「自分では勝負ができたと思うので、すっきりしました。右で距離をとりたかったけれど、そうさせてもらえませんでした。悔いはありません」。

　敗因については多くを語らず「八重樫さんが単純に僕よりも強かったということです。(アマでは4勝しているが)プロでの戦い方が八重樫さんに向いていたんだと思います」と淡々と話した。
　それでも両目上からの出血が大きなハンディになったことは間違いない。「血が出てから見えづらくなり、11Rからは両目ともほとんど見えていませんでした」と苦しい状況だったことを明かした。