[試合後取材]2026.5.7
東京ドームで見えた現在地。下町俊貴が挑む次のステージ

IBF(国際ボクシング連盟)フェザー級6位の下町俊貴(29=グリーンツダ)は2日、東京ドームで開催された「NTTドコモ Presents Lemino BOXING」フェザー級10回戦で、同級7位の阿部麗也(33=KG大和)との技術戦を制し、引き分けを挟んで21連勝を飾った。
大観衆の熱気が渦巻いた東京ドーム。その中心で繰り広げられたのは、派手な打撃戦ではなく、寸分のズレが勝敗を分ける高度な技術戦だった。IBF同級上位ランカー同士の対峙は、観る者の評価すら二分する難解な内容となり、その余韻は試合後も静かに広がり続けている。
そんな中で勝者としてリングを降りた下町。しかし、その表情に満足の色は薄い。むしろ、勝った者だけが抱える違和感と、次へ向かうための課題を冷静に見つめていた。
試合から数日。まず口をついて出たのは、勝利の実感とは異なる言葉だった。「ネットの声を見たら『阿部選手が勝っていた』という声が多くて」と切り出しながらも、内容については冷静に振り返った。「思っていたより圧力も感じなかったですし、課題を持ってやったことは出せたと思う」。派手さには欠けたが、想定した戦術は遂行できたという自己評価だ。
ただし、完璧とは程遠い。「リカバリーが甘くて足の動きが悪かった」と明確に課題を口にする一方で、「動き切れました」と言い切るあたりに、この試合で得た手応えもにじませた。
実際、リング上で展開されたのは"当てさせない"高度な駆け引きだった。「このレベルまで来るとジャブも簡単に当たらない」。その一言に、この試合の本質が凝縮されている。
その中で機能したのが、元世界王者の長谷川穂積氏からの助言だった。「1ヶ月前に教えてもらったことがハマりました」。これまで対策を重視してこなかった下町が、強敵を前に準備の質を変えた。その変化こそが、僅差の勝敗を引き寄せた要因と言えるだろう。
約8年ぶりのサウスポーとの対戦も大きなテーマだったが、「ガンガン来ないので大丈夫でした」と振り返るあたりに、冷静な試合運びがうかがえる。
さらに見逃せないのは、トレーニングへの意識改革だ。「これまで追い込み方が分かっていなかった」。自らそう言い切るあたりに、伸び悩みへの自覚と危機感がある。会長、トレーナーの目の下で"サボれない環境"を作り上げたことで、「やり切るしかない」というマインドが形成された。
その成果は試合中にも現れた。足が動かない苦しい状況でも、本石昌也会長の「やってきただろ!」という声に支えられ、最後まで戦い抜いた。技術だけでなく、内面的な強度が一段引き上げられた印象だ。
階級アップについてはポジティブな材料も多い。「減量の苦しさはなかった」。フィジカル面での余力は、今後のパフォーマンス向上に直結する可能性が高い。ただし「リカバリーをもっとしっかりしたい」と、ここでも課題を忘れない。
そして視線はすでに次へ向いている。「今年で30歳なので世界戦はできるだけ早くやりたい」。
できるだけ早く世界戦をしたい
言葉はシンプルだが、その裏には時間との戦いという現実がある。「いつか」と言っていられるフェーズは終わった。
勝った。それでも納得していない。だからこそ、次へ進める。
評価が割れた一戦は、下町俊貴にとって通過点に過ぎない。むしろ、この"割れた評価"こそが、世界へ挑むための最後の磨き石になるはずだ。
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