[引退]2025.12.11
20戦で刻んだ軌跡と感謝。大橋哲朗の引退の言葉

前WBOアジアパシフィック・スーパーフライ級王者の大橋哲朗(27=真正)が11月30日、自身のSNSで現役引退を表明した。2017年6月にプロデビュー。スピードと距離感を武器に、2018年には全日本新人王を獲得。昨年4月、中川健太(40=三迫)からWBOアジアパシフィック王座を奪取し、上昇気流をつかんだ。
しかし、初防衛に失敗。さらに3試合を経て、今年10月の日本バンタム級王座決定戦を最後に、グローブを吊るす決断を下した。
大橋は引退の理由についてまず、「結果的には負けたが、前回の試合で勝っても負けても辞めるつもりだった。世界チャンピオンになれる力はないという現実を知ったのと、家族もいるので」と、率直な胸中を吐露。続けて、「今はスッキリしている。ボクシングが嫌いで辞めたわけじゃないし、好きなままで終えることができて良かった」と、前を向いた笑顔を見せた。
思い出の試合を問われると、大橋は「1つには絞れなかった。3つあるんです」と語った。まず挙げたのは、2018年の全日本新人王決定戦(若木フルスイング忍戦)。「あの1年が成長させてくれた1年。会長が担当した選手で、全日本新人王を獲ったのは僕が初めてだった。ランキングに入ってスタート地点に立てた試合」と、原点として強く刻まれている。
2つ目は、2019年10月の日本ユース・スーパーフライ級王座決定戦(高山涼深戦)。「純粋に試合が楽しかった。倒して倒されて、最後はやられたけど、映像を見返してもワクワクする試合ができた」。勝敗以上に、自らが体現した"ボクシングの面白さ"を誇れる一戦だ。
最後に挙げたのはWBOアジアパシフィック王座奪取戦。「友達が亡くなって…。自分じゃないような感情で挑んで勝てた」。勝利と同時に、大切な存在への想いを抱いたまま、リングに立った試合だった。
大橋は現在、現役時代からサポートを受けてきた塗装会社に勤めている。さらに、同じく縁の深い居酒屋でも、スタッフとして働くこともある。
「まだ20代だし、やったことがないことにチャレンジしたかった。塗装は、形に残るものじゃないですか。自分がやったことを形に残したい」と、新たな道に迷いはない。
「ボクシング人生はしんどかったし、楽しかった」。その表情は清々しい。「世界チャンピオンになりたくて始めたので、(それを果たせなくて)悔しい思いもあるが、20戦戦って、誰にもできない経験をさせてもらった」と胸を張った。
大橋は最後に、長年指導してくれた山下正人会長への思いを語った。「高校生の時から面倒を見てくれて、父みたいな存在。厳しくも可愛がってくれて、人間として指導してくれた恩人。ボクシングに集中できる環境を作っていただき、感謝しかない。これからもボクシングに携わる機会がある中で、また何かお手伝いさせてもらえたら」。
大橋は、律儀で、言葉を選びながら話す青年だった。勝って会見に現れた時も、負けて肩を落とした時も、取材陣の前では真正面から語ってくれた芯の通った選手だった。
リングを降りても挑戦は続く。第二の人生も、あなたらしいフットワークとセンスで、自分の色を塗り重ねてください。
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