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元世界2階級制覇王者の粟生隆寛(帝拳)が36歳の誕生日を迎えた4月6日、新型コロナウイルス感染の影響を考慮し、インスタライブで引退を発表した。単独発表の模様はインスタグラムのtakahiro_aohで閲覧が可能なので、見逃した方は是非ともアクセスして視聴して頂きたい。
試合に勝っても敗れても、快くボクシングモバイルの取材に応じていただきました。ありがとうございました。
■生涯戦績:33戦28勝(12KO)3敗1分1無効試合
■元WBC世界フェザー級王者
■元WBC世界スーパーフェザー級王者
高校史上初の6冠達成という偉業を成し遂げた粟生は、プロ入り後も卓越したボクシングセンスとカウンターを武器に中量級のリングを牽引した。2007年3月に日本王座に就くと2008年10月に世界初挑戦。WBC世界フェザー級王者オスカー・ラリオス(メキシコ)から序盤にダウンを奪って代々木第一体育館のファンを総立ちにしたが、判定で王座を取りこぼした。しかし、5ヶ月後の2009年3月12日、後楽園ホールでラリオスに再挑戦し世界初戴冠を果たした。
初防衛戦は王座獲得から4ヶ月後の7月14日。ランキング1位のエリオ・ロハス(ドミニカ共和国)を後楽園ホールに迎えて行われたが、精彩を欠いた粟生は王座陥落。鬼門に涙した。
粟生に本来の動きが戻ったのは、スーパーフェザー級に上げて減量苦から解放されてからーー。
2010年11月26日、名古屋日本ガイシホールのダブル世界戦は記憶に新しい。当時、バンタム級からフェザー級に2階級上げて世界王座返り咲きを目指した長谷川穂積氏とフェザー級からスーパーフェザー級に主戦場を移して世界王座奪還を狙った粟生が、揃って緑のベルト奪取に成功した。チャンピオンのビタリ・タイベルト(独)から判定勝利を挙げた。
円熟期を迎えたと思われた2012年10月27日、ガマディエル・ディアス(メキシコ)を相手に4度目の防衛戦に臨んだが、まさかの王座陥落。栄光と挫折を繰り返した。
インスタライブで引退を表明した際、粟生隆寛(帝拳)が流した大粒の涙にもらい泣きしたファンも多いはず。粟生の現役晩年はケガとの戦いだったが、それよりも悔いが残るのは、試合後にレイムント・ベルトラン(メキシコ)の薬物使用が発覚して無効試合となった2015年5月1日のWBO世界ライト級王座決定戦だ。前日計量でベルトランは、ライト級の契約体重を300グラム超過していたのだから尚更だ。粟生の選手生命は、ここで絶たれていたのかもしれない。この試合から半年後の11月にはディアスとの再戦が組まれていたが、試合直前に粟生が左足関節腓骨筋腱脱臼を負って欠場。長いブランクを余儀なくされた。
ラストマッチは2018年3月1日、東京五輪2020のボクシング競技の会場となる両国国技館で宿敵ディアスと再戦し、判定勝ちを収めた。
ファンを魅了したシャープなカウンターと類稀なボクシングセンスで、先に引退した内山高志氏や三浦隆司氏らと共に中量級のボクシングを大いに盛り上げた世界2階級制覇チャンピオンに惜しみない拍手を贈りたい。