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生死をさまよう交通事故からカムバックした伝説のボクサー、元IBF世界ライト級、WBA世界スーパーウェルター級王者ビニー・パジェンサ(米)の実話をもとに作られた、マーティン・スコセッシ製作総指揮のボクシング映画「ビニー/信じる男」が7月21日(金)よりTOHOシネマズシャンテほかで全国公開される。これに先駆け、東京・渋谷で試写会が開かれ、上映後のトークイベントには美人ボクサーとして知られるWBC女子世界ミニフライ級王者の黒木優子(26=YuKO)がゲストとして参加した。
物語は1988年、マイルズ・テラー演ずるビニーが2階級制覇を目指し、5階級制覇王者フロイド・メイウェザーJr(米)の叔父、WBC世界スーパーライト級王者ロジャー・メイウェザーに挑戦するところから始まる――。
物語は1988年、マイルズ・テラー演ずるビニーが2階級制覇を目指し、5階級制覇王者フロイド・メイウェザーJr(米)の叔父、WBC世界スーパーライト級王者ロジャー・メイウェザーに挑戦するところから始まる――。
ルーニーと出会い再起の道へ
この試合でビニーは、減量苦による影響が大きく判定負けで王座奪取に失敗。その後も敗戦が続き、マネージャーのルー・デュバに顎が弱いと指摘され引退を勧められるが、かつてマイク・タイソンのトレーナーとして活躍したケビン・ルーニー(アーロン・エッカート)とコンビを組み、無謀にも2階級上げての再起を図る。1991年10月、ビニーは30戦無敗のWBA世界スーパーウェルター級王者ジルベール・デュレ(仏)に地元で挑戦するチャンスを掴んだ。デュレ有利と囁かれた試合は、ブーイングが飛び交うほどに調子が上がらずにいたビニーだが、ルーニーが気合いを入れると終盤からは持ち前の強打で襲いかかり、最終12回にデュレを倒しTKO勝ち。念願の2階級制覇を達成した。
2階級制覇王者からどん底に落ちたビニー
見事復活し、この階級でも通用すると確信したビニーとルーニーだが、試合から1ヵ月後、ビニーは納車されたばかりの車で正面衝突の事故を起こし、首を骨を折る重傷を負ってしまう。選手生命はおろか、医師には歩くこともままならないと宣告されたビニー。破損した頚椎の治療に、頭蓋骨をボルトで固定した金属製のベストを装具しての不自由な生活。王座を剥奪され、恋人も離れたビニーの胸には、このまま一生を終えるのかという不安のなかでボクシングへの想いが募っていく。「復活を遂げるか、途中で死ぬか」と自身に言い聞かせ、ここからルーニーとともに狂気とも言える第二の復活劇を目指すことになる。そしてクライマックスは伝説のチャンピオンへの挑戦――。
背中を押してくれるような映画と黒木
上映後のイベントで、闘争心を掻き立てられたと興奮気味の黒木は、「衝撃でした。本当に実話ですか?」と口にしたのも無理はない。例えフィクションでも現実味のないストーリーだけに、見終わったあとは感動とともに、ボクシングを知るものなら薄ら怖ささえ覚えるかもしれない。あの状態で何故再起ができるのか、間違いなくビニーは「一生車椅子生活」、最悪は「死」を覚悟していたはずだ。幼い頃からビニーにボクシングを教え、彼をどんな時でも守っていた強面の父アンジェロ・パジェンサさえも、復帰戦のセコンドにはつこうとしなかった。ビニーが頼れるのはただ一人、トレーナーのルーニーだけだった。この映画は選手とトレーナーの絆の物語でもあるのだ。黒木も自身と照らし合わせ、トレーナーとの絆の大切さを改めて感じていた。
エッカートは役作りに頭を剃り、18s増量した
落ち目のビニーと、タイソンに契約を切られ、飲んだくれる日々を送っていたルーニーの出会いがこの奇跡を生んだとも言える。二人で再び這い上がり、ビニーが選手生命を絶たれた時もルーニーだけは彼のもとを離れようとはしなかった。もちろん、ビニーが再起することなど望んではいない。ルーニーは、自身がそうしたようにビニーにもボクサーからトレーナーへの転向を願っていた。ならば何故と問いたくなるが、答えは試合後のインタビューという形でビニーが非常にシンプルな言葉で表現している。おそらくルーニーも同じ答えを共有していたのだろう。
これを見ずしてボクシング映画は語れない
アカデミー賞作品「セッション」で一躍スターダムにのし上がった若手俳優のテラーは、8ヵ月かけてボクサーの体格作りに取り組み、19%の体脂肪を6%にまで落としたという。CGや派手な演出は一切ないが、こういった地道な作業が「タクシードライバー」「レイジングブル」の監督として知られ、映画化を熱望した巨匠、M.スコセッシ総指揮のもと、ボクシングシーンを含め映画をリアルなものにしている。