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[大学記録]2017.5.25

恒成・拓真に喫した敗北バネに

 大学ボクシング界では東西でリーグ戦が開催中だが、そのなかで坪井智也(日本大)は、関東史上5人目の「4年間全勝」に迫っている。浜松工業高校時代は、田中恒成(中京高校)や井上拓真(綾瀬西高校)、両者をインターハイで破った岩田翔吉(日出高校)が争うトップ戦線に及べずにいた坪井は「取り組む姿勢はあの頃のまま」と語る。
初代の副島氏(左)とモスクワ五輪仲間
 関東リーグで4年間全勝を収めたのは、副島保彦(中央大)、仁多見史隆(東京農業大)、太平直樹(東京農業大)、藤田健児(拓殖大)の4人。坪井はどんな姿勢でここへの仲間入りを目指そうとしているのか――。
 何度負けても悔しいと思い続ける。坪井はそんなポリシーを持ってきた。
「恒成とは地区も一緒(東海ブロック)ですから、合計5回戦いました。全部負けています。でも負ければ負けるほど次は勝ってやろうと思っていたんです。勝てばまた違う世界が見えてきますから」
全日本選手権でも全勝中
 そんな坪井が大学進学後、初めてつかんだ光が関東リーグの5戦全勝だった。ライトフライ級はチームにとっての第1試合。勝つか負けるかは、以降の流れを大きく左右する。この任務を1年目で完遂できたことで、坪井はようやく夢と現実の差が生まれ始めたと感じた。
「元々はゾウ・シミン(中国)みたいに反射神経を活かした戦法にすごく憧れていましたし、そんな世界の天才と戦える国際大会をずっと意識していました。結果的にゾウと全然違うボクシング・スタイルをつくってきましたけど(笑)」
 2016年リオ五輪を目標設定し、全日本選手権を大学1年から連覇してきた。「ライトフライ級の逸材はプロに行ったから、アイツは日本一になれた」と思われない実力を持ちたいという王者としてのプライドも生まれている。
「五輪時代のゾウのように」と坪井
 一方で、五輪の前年に出場した世界選手権ドーハ大会で、ひたすら追い回したはずのガンフヤグ・ガンエルデン(モンゴル)にポイント負けを喫する。動画をインターネット上で観た知人たちから「完全に勝っていた」と言われても、坪井は、動画で自分が負けた理由を受け止めようと見直した。
「相手は必死そうな表情で下がっていますけど、結局は有効打の数で採点されていますね。でもこの採点基準を肯定したら、他の試合でも、これまで以上に採点の規則性をつかめるようになりました」
 それを基に、坪井はスタイル修正を始めたが、最初はボクシングスタイルが崩れた。2016年1月、肝心の五輪予選・代表選考会でも、柏崎刀翔(自衛隊体育学校)に出場権を持っていかれてしまう。
「(柏崎は)大学の先輩でもありますから、リオに行ってほしい気持ちはもちろんありましたけど、悔しい気持ちもなかったと言えば嘘になります。ただ、もう過去を意識しても仕方ないですから」
先輩の柏崎(右)が今も競い相手に
 新たな目標、「2020年東京五輪」には、来年にジャカルタで開かれるアジア競技大会が重要だと見ている。ひとまず年末の全日本選手権では、柏崎に借りを返した。
 「リーグ戦4年全勝」には重要性を感じているのだろうか。
 それに、坪井はイエスともノーとも答えなかった。
「今年は部のキャプテンを任されているんです。ここで個人記録を意識したら、チームが乗ってこない。だから、チームのために全勝しようとは思っています。自分が記録を達成することが、大学の4連覇のカギってことにしていたら、目標をはたしたときに、士気が高まるじゃないですか」
 
日大合宿所にて
 かつて壁となった田中や井上は現在、プロボクシング界で世界一を争っている。一方で坪井はまず、ローカルながら重要な伝統舞台でひとつのレコードを狙う。

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