田中恒成が早送りのようなスピード!

　スーパーフライ級での初防衛戦に向けて、持ち前のスピードを活かした攻撃に原点回帰する。「スピードを取り戻しつつある。ここ数試合ディフェンスや攻撃を意識してやってきたが、そのくらい大きな変化があることをしていたので、時間がかかった。久しぶりにスピードを取り戻そうとしても、久しぶりすぎて体がついてこなかったり、スピードが出なかったり。速いスピードを出すことが、いかに体に負荷がかかることだったんだなと改めて実感した。少し時間がかかったが、試合で少し変化を感じてもらえるようなレベルまで持ってくることができた。フェイントやタイミングを加えた"意味があるスピード"を見せたい」と、仕上がりの良さをアピールした。

 ディフェンスと攻撃力をアップして、再びスピードを活かし、強さに磨きをかける。

　7月20日(土)にジョナタン・ロドリゲス(29=メキシコ)との初防衛戦を予定していたが、ロドリゲスが前日計量で2.9kgオーバーしたため計量失格。両陣営の話し合いの末、試合中止の決断を下した。その後、あらためて南アフリカの新鋭との防衛戦が決まった。

　田中は、「誰しも目標としてたこと(試合)がなくなると、一時的にモチベーションが下がることがあるが、自分にとって、7月20日に行われる予定だった試合は、大きな目標ではない。王座統一という目標に向けて過程の一つでしかなかった。なので、モチベーションが落ちることもない。モチベーションを維持したまま、ここまで来ている」と淡々と語った。

　改めて挑戦者の印象を聞かれた田中は、「KO率が高く、テクニカルなボクサー。ジャブを起点に組み立ててくるのでジャブが厄介。カウンターが上手い」と、13戦無敗のカフを警戒した。

　会見に同席した畑中清詞会長は、「(恒成は)前回からモチベーションが落ちることもなく、継続して良い感じできている。相手はブルファイターでもなく、逃げるタイプでもないので、噛み合うのではないか」と、田中のパフォーマンスに期待を寄せた。

　今回の試合から父・斉(ひとし)氏がサブセコンドとして復活する。斉トレーナーがセコンドに就くのは、2020年大みそかに行われた井岡一翔(35=志成)との一戦以来だ。

　今年2月の王座決定戦で「攻め切れなかったと感じた」と恒成から(セコンドを)頼んだという。「勝負どころでの爆発力。自分で改善しないといけないが、声を出してくれることで気持ちを鼓舞してもらえる」(田中)

　斉氏は、「恒成から『また(セコンドを)お願い』と。子どもから言われて嫌とは言えない。ここぞという時に声を出していきたい。練習中でも声をかけている」と語った。

　結束が強い「TEAM恒成」に父が加わり、さらにパワーアップする。

　会見後には、シャドーボクシング1R、全力シャドー3R、ミット打ち2R、サンドバッグ打ち1R、ディフェンス練習1R、チューブを使ってのシャドー1R、全力シャドー1R、シャドーボクシング2Rと、12ラウンドにわたり、たっぷりと汗を流した。

　全力シャドーでは、陣営の懸け声を合図に、足を加速させてパンチを目まぐるしく出すと、ミット打ちでは、脱力からのトップギアで高速コンビネーションを叩き込んだ。村田大輔トレーナーが「体幹を安定させるため」チューブで田中を引っ張り、パンチを打ち込んだ。

Sフライ級で力を示す

　2日間で田中の試合を含めて7つの世界戦と那須川天心(25=帝拳)のWBO-AP王座決定戦が行われるビッグイベント。田中は、「全員がライバル。かといって『こいつより良い試合を見せてやろう』とかではない。スーパーフライ級で王座統一。この階級で力を示していく」と言葉に力を込めた。