試合:これまで数々の名チャンピオンが巻いてきたWBC世界バンタム級王座を国民的知名度を誇る那須川と王座奪還を狙う井上が争った。先に入場した井上拓真はゆっくりと腹が決まった表情で入ってきた。リングには井上家(井上尚弥、井上真吾トレーナー、井上浩樹)が上がり、この試合への思いを強さを感じさせた。続けて那須川は、リング下で息をフッと吐くと、「やるぞ!」と気合いを入れてリングインした。拓真がコールされると井上尚弥が手を回して観客に拍手を誘導した。初回、井上はジャブを飛ばしながらワンツーを叩き込むが、サウスポー那須川はガッチリとガード。ラウンド終盤、左オーバーハンドで顔を弾き先制攻撃。終了のゴングが鳴るとクルクルッと腕を回してアピールした。2回、那須川は左ストレートから右フックを好打するとスピードを活かした攻撃で見栄えの良いボクシング。3回、井上はプレスをかけて右ボディストレートを差し込むと返しの左をバックステップで対応。4回、「拓真」「天心」コールが沸き起こる中、息をつかせぬハイレベルな攻防を展開した。4回終了時の公開採点は38-38×3のイーブン。5回、井上はジリジリと距離を詰めてワンツーで顔を弾きポイントをピックアップ。6回、井上はステップインから右フックをねじ込むと右アッパーをかち上げた。ラウンド終了後には手応えの頷きをした。7回、井上は左ボディを突き刺すと返しのパンチを冷静に対応。8回、那須川はプレスをかけてアグレッシブな姿勢。しかし、井上も集中力を切らさず決定打をもらわず。8回終了時の公開採点は76-76、77-75、78-74で井上がリード。9回、お互いの引き出しをフル活用しての攻防。10回、井上は相手の変則的なアッパーにもボディワークで回避。11回、井上はジャブを多用しつつ、右カウンターを好打。大歓声で迎えられた12回、那須川は距離を詰めるが、井上は頭のポジションを上手くずらしながらワンツーをヒットし攻勢を印象付けた。試合終了のゴングが鳴ると勝利を確信した井上が雄たけびを挙げた。中盤からゲームメークした井上が王座奪還に成功した。初黒星を喫した那須川は一旦、息を吐き拍手で勝者を称えた。