「怪物」の真価発揮か!?

　前日の宣言通り、開始から仕掛ける田口に対し、スピードで上回る井上は抜群の距離感でワンツー、ボディをヒット。すると一旦は手数が落ちた田口も、中盤以降は井上の右ストレートに単発ながら左フックを合わせ勢いを取り戻す。打てども打てども前へ出てくる田口に、井上の的確な攻撃は荒くなり、終盤は力を出し尽くす打ち合いとなった。
　最後まで王者のプライドを見せた田口だが、全般を通じて井上がペースを握り、最大6ポイント差をつけ判定勝ち。日本タイ記録となるプロ4戦目での日本王座獲得に成功した。

　試合後、敗れた田口はうつむきながら「行けると思って行ったが躊躇したところもあり、自分を出し切ることができなかった」と唇を噛んだ。井上については「以前スパーリングした時と比べてパンチ力は感じなかったが、テクニックとスタミナはあった。最後までハイペースで動かれてしまった」とその実力を認めた。それでも同席した渡辺均会長が「再戦は世界戦のリングでしたい」と話すと一瞬笑顔が戻り、一からの出直しを誓った。
　田口が通うワタナベジムの先輩でWBA世界チャンピオンの内山高志は、この試合のテレビ解説を終えると、村田諒太(三迫)との試合に挑む、ワタナベジムのもうひとりの後輩、柴田明雄の試合会場(有明コロシアム)に渡辺会長らと移動中、敗れた田口に向けて「まずは、お疲れさま。まだまだ田口は伸びる選手。今日の試合で、また一皮むけたと思う。ゆっくり休んでもっと上を目指して欲しい」とコメントを残した。

　一方、最速タイ記録で日本王者となった井上は「記録は意識していないが、倒そうと狙いすぎてしまった。だらだらやってしまい結果はダメ」と地元での勝利も納得いかず。田口の印象を「以前と特に変りは感じなかった。パンチは芯でもらっていないが、(自分のパンチも)手応えがなかった」とした。

　トレーナーの父・真吾氏も「気持ちにムラがあった。試合に集中できていればもっと流れも変わった」と厳しい評価を下したが「いろんな課題が見つかった。そう言う意味では良い経験ができ、次に繋げやすくなった」と反省ばかりの息子を労った。

　WBA世界同級3位の田口に勝ったことにより、世界への距離がぐっと縮まった。大橋秀行会長は「年内にもう一試合(防衛戦)ぐらいやって、世界戦は来年以降かな」と、日本最速記録となる6戦目での世界奪取計画を示唆したが、井上は「今日のような試合じゃ、まだ(世界は)ダメだと思う。言われた課題にしっかり取り組みたい」と、世界仕様への進化をもとめた。