日本重量級主役の座は

　挑戦者・沼田はジワジワと圧力を掛けるが、王者チャーリーは下がりながらもワンツー・左フックで様子をうかがう。チャーリーはジャブで距離を測り、回転の速いワンツー・左フック・左ボディを浴びせ、沼田にガードを固めさせる。4回終了時にジャッジは3-0(39-38・39-37・40-36)でチャーリーを支持。中盤、挑戦者もエンジンが掛かり出し、右ストレート・左右フックで仕掛けると、王者もワンツーフック・左ボディを返す。しかし6回、沼田が前に出るとチャーリーの右ストレートに膝が揺れ、追撃のワンツー・左フックにダウンを喫する。8回終了時の採点もダウンを奪った王者が3-0(77-74・78-74・78-73)でリードを保った。そして9回2分40秒、沼田は果敢に打撃戦を仕掛けるが、チャーリーの右ストレートに腰が沈み、右アッパー3連打を打ち抜かれキャンバスに崩れ落ち10カウントが数えられた。

　階級の壁を打ち破ることは叶わず、王者の強打に黒星を押し付けられた沼田は「チャーリーはパンチがあり、ガードが下がってしまった。なんとかカウンターを狙ったが続かなかった。最後は僕の"やる気スイッチ"がオフになった」と絞り出すような声で試合を振り返った。
　進退について尋ねられると沼田は「チャーリーのような素晴らしいチャンピオンと、最後にいい試合ができました。ボクサーとしてまっとうできましたし、これで引退します」とグローブを吊ると語り、会見を締めくくった。これまで何度か「引退」を口にしてきた沼田だが、本当にリングを去るのかその去就に注目が集まる。

　剛腕で鳴らす挑戦者をキャンバスに沈め 、アジア最強の座を守り抜いた王者チャーリーが会見を開いた。「いい試合で、ペースもコントロールできた。疲れもなくもっとハイペースで組み立てたかったが、1ラウンドに頭を殴ったせいで左拳を痛めてしまいジャブが出せずスローテンポになった。5ラウンドにサウスポーにスイッチしたのもそれが理由。でも6ラウンドに沼田がダウンしたときは、倒れたことに驚いてしまったよ」 と会心のKO劇に笑顔を見せた。
　改めて挑戦者の印象を求められチャーリーは「とてもハードパンチだったが、色々な種類のパンチを打ってこないので、何を打ってくるか分かったよ。でもヌマタはハートが強かったし、とても頭が硬かったね」と痛めた左拳を氷のうで冷やしながら、沼田の健闘を称えた。

　今後の目標に質問が及ぶとチャーリーは「当然、世界タイトルのようなビッグマッチを戦いたい。マッチメークが大変なのは分かっているが…。身体も心も元気だし、準備はできているよ」と世界をアピールすると、報道陣から村田諒太(27=三迫)のデビュー戦の相手はどうかと尋ねられ「いま直ぐに試合をするのでも問題ないよ。でも村田はプロキャリアをスタートしたばかりだし、僕と試合をするのはまだ早いよ。でも戦えるならば、次の相手が村田でもいいよ」と笑顔で汗を拭うと、金メダリストとの対戦にも興味を示した。

　東洋太平洋スーパーウェルター級王座V8を達成し、日本重量級主役の座に君臨するチャーリーだが、自身については「僕はもう若くないし、残された時間は少ない。早く世界に挑戦したい」とチャンスをうかがう。果たしてチャーリー太田は世界最高峰のリングで、悲願を成し遂げることができるのか。