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[試合後会見]2013.4.17

怪物が日本タイトルに王手!!

超満員の後楽園ホール
 16日、後楽園ホールで開催された「フェニックスバトルVol.43」のメインイベントは、日本ライトフライ級5位・井上尚弥(大橋)のプロ3戦目がラインナップ。
 井上にとって初の日本人対決となる、日本同級1位・佐野友樹(松田)との一戦は、フジテレビで21年振りとなるゴールデンタイムで生中継された!!
4Rのダウンシーン
 立ち上がりから井上が鋭いジャブで佐野の顔面を跳ね上げ、一気にペースを引き寄せる。すると2回、井上は左フックで佐野のアゴを打ち抜きダウンを奪う。4回、佐野も右ストレートを返すが、井上の左フック連打に膝が揺れ、右クロスでダウンを追加。中盤、佐野もキャリア24戦の意地を見せワンツー・左ボディで前に出るが、井上は巧みなブロック・バックステップで連打を許さず、左フック・左アッパーを浴びせる。そして最終10回1分9秒、井上の強打を耐え続けた佐野だが、左フックに腰が沈み、右ストレート・左フックで顔面を貫かれると、遂にレフリーが割って入った。
対応できなかった
 最終10回TKOで敗れた佐野は開口一番「強かったです」と脱帽の様子だった。「正直いってパンチはもっとあると思ったけれど、スピードがあって駆け引きの引き出しが多いので対応できませんでした。間の取り方も巧いし、強いとしか言いようがありません」と語り、右目上に3cmほどの傷がパックリと口を開け、その上にはさらに1cmほどの小さな傷もあった。「こんなに顔が腫れたのも初めてです」と井上の強さに呆れた様子でもあった。唯一ともいえる好機が4回にあったが、「もっと打ち合えばよかったかもしれないけれど…とにかく完敗です。20歳の強さじゃないですよ」と諦め顔だった。井上の将来性について佐野は「来年、再来年はもっとバケモノになると思います。伸びしろがいっぱいある選手ですよ」と最後は日本ボクシング界期待の星にエールともいえる言葉を送った。
右拳を痛めながら快勝
 デビューから3連続KO勝ちを飾った井上だが、会見での表情は必ずしも晴れ晴れとしたものとはいえなかった。3回に痛めたという右拳が気になっていたのだろう。その右拳を氷で冷やしながらの応答となった。「勝てたことは素直に嬉しく思います。佐野選手はさすが1位。タフでした。右拳は3ラウンドに痛めたので、それからは左一本でコントロールしようと思いました」と、まずは簡単に試合の感想を口にした。2度のダウンを奪ったすえの10回TKO勝ちは、20歳の俊英にとって貴重な経験になったはずだ。井上自身も「正直いってハイペースのまま10ラウンドはきついと思いますが、自分のペースで10ラウンドやれたので自信になりました。仕留めなくちゃという気持ちも最後までありました」と手応えを感じた様子だった。
9R戦えたのは収穫
 また課題も見えた。4回にダウンを奪ったあと、佐野の右を浴びたシーンを井上は振り返った。「打ち急いだところにもらいました。効きはしなかったけれど、あそこまではっきりパンチをもらったのは8オンスのグローブでは初めてでした」。それでも右拳を痛めながら長丁場を自分のペースで戦い抜いたことは自信に繋がったようだ。課題ばかりですが、左手一本でコントロールしたので、やりたいことの半分ぐらいはできたと思います」と、最後は笑顔をみせた。
 厳しい自己評価の井上本人とは異なり、大橋秀行会長は「長いラウンドを戦って最後に仕留めたのが収穫。長い目でみればいい経験になったはず。合格の試合です」と愛弟子に及第点を与えた。今後に関して大橋会長は「井上が1位になったら指名試合で、日本ライトフライ級王者の田口良一選手とやりたいですね。向こうも戦いたがっているらしいので」と希望を口にした。井上も「できれば田口さんに挑戦したい!!」とアピールした。
次は田口に挑戦か!?
 トップコンテンダー佐野を下したことで、井上は日本タイトル挑戦に向け大きく前進したことになる。会場で井上の戦いを視察した日本ライトフライ級王者・田口良一(ワタナベ)は「本当に強かった。実質、左1本で佐野選手をKOするとは流石ですね!!井上選手から僕の名前が出ましたが…嬉しいですよ(笑)。僕は井上選手と戦う姿を想定していますから!!」と対戦に意欲を見せた。
 井上の出現により、一気に熱を帯びてきた日本ライトフライ級戦線、このまま怪物に主役の座を独占されてしまうのか…。