新時代の幕開けか…

　王者・湯場は開始から悠然と構え、挑戦者・佐々木をその"オーラ"で威圧し、左ストレートで右目上を切り裂く。しかし挑戦者は気の強さを見せ、猛然と右ストレート・左フックで王者に襲い掛かる。湯場は打ち終わりを狙い左ストレートを浴びせるも、佐々木の勢いは落ちず右ストレートを打ち込む。そして4R、湯場の左ストレートに対し、佐々木は決死の覚悟で踏み込み右ストレートを突き刺し膝を揺らす。佐々木はこのチャンスを逃さず、怒涛のワンツー・左フック・右ストレートを顔面に浴びせると湯場はキャンバスにダイブ、10カウントを聞かされる結末となった。

　2度目の防衛に失敗し、日本ミドル級王座から陥落した湯場は「緊迫感がなかった…。甘く見た訳ではないが、油断していた。初回に良いのが入っていけると思ったが、相手に合わせてしまったのかな。防衛は難しいし、最後は足に力が入らなかった。負けるときはこんなもの…」と沈痛な面持ちで試合を振り返った。
　今後の進退について湯場は「肩の荷が下り、スッキリしました。チャンピオンじゃないとモチベーションが上がらない。"日本5階級制覇"を見すぎてしまったのかも。負けたら"終わり"と考えていたので…」と明言は避けたが、グローブを吊るすことを示唆した。

　日本重量級戦線を牽引し、その名を日本ボクシング界の歴史に刻んだ"覇王"湯場を打ち砕き、日本ミドル級新王者となった佐々木は満面の笑みで会見を開いた。「3回くらいで右ストレートをもっと当てにいきたかった。4回に右ストレートの後に体勢を低くすることで距離を詰められたし、左ストレートを避けられた。湯場さんは"雲の上の存在"だったが、会長達から"勝てる!!"と言われ気持ち的に乗っていた」と試合を振り返った。

　4回に湯場が下がった場面を尋ねられ佐々木は「湯場さんは下がりつつも右フックで倒している。そんな場面を何度も観ているので、慎重に詰めることができた。今回のタイトルマッチを決めてくれた会長に感謝しています」と湯場戦に尽力してくれた渡辺会長に頭を下げ、最後に「まだまだ強い選手がいる。チャンピオンとして胡選手やカルロス選手と戦うと思っていたし、今日は僕が勝つと信じていた。夢で何度も僕が勝つシーンを観たし、夢は描き続ければ必ず実現するんです!!」とこれからは自分が重量級の主役であると胸を張った。

　今回の勝利により、日本ミドル級戦線は"戦国時代"の様相を呈してきた。
　初防衛戦は"最強後楽園"を勝ち抜いた挑戦者を迎え撃つことになるであろう。果たして"若武者"佐々木は王座を守り、その拳で確固たる時代を築き上げることができるのか…。