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[引退]2024.5.24

日本1位の古谷昭男が引退

古谷昭男(六島)
 日本スーパーフライ級1位の古谷昭男(26=六島)が23日、自身のSNSで引退を発表した。2015年8月にデビューした古谷は、2019年10月に日本ランカー、2020年12月に世界ランカーを撃破すると、3度にわたりタイトルに挑戦。

 ベルトには手が届かなかったが、激戦を繰り広げて見るものを魅了した。
IBF王者の西田凌佑(27)と切磋琢磨してきた
 4月25日(木)に後楽園ホールで、日本スーパーフライ級王者の高山涼深(27=ワタナベ)に挑戦したが、3回TKO負けし、グローブを吊るす決意を固めた。「ラストチャンスのつもりで挑んだ。まったく悔いはないです」。

 これまで何度もスパーリングで切磋琢磨してきた同門の西田凌佑(27)が、5月4日(土)にIBF(国際ボクシング連盟)バンタム級新チャンピオンに輝いた。「ただただ、ファンとして感動させてもらった。良い夢を見させてもらった」と西田の戴冠劇を喜ぶと、「前回の試合が終わってから引退することを決めていて、周りにも話していたので、練習にも行っていなかった。それにも関わらず西田さんから『試合直前のアップのために、マスボクシングの相手をしてもらえないか』と頼まれた。僕を指名してくれて、本当にうれしかった」と明かした。

 ともに汗を流してきた2人の関係の深さ、西田の古谷に対する思いがわかるエピソードだ。
18戦11勝(4KO)7敗
 高校1年で六島ジムに入門した古谷は、翌年にプロボクサーになった。4回戦時代は4勝(1KO)3敗だったが、6回戦に上がると、持ち前のスタミナと気持ちの強さを武器に、破竹の5連勝でタイトルマッチまで一気に駆け上がった。「プロになって10年。自分がここまでやれるとは思っていなかった。こんなに強くしてもらって、チャンスを何度もくれた。こんなに素晴らしいジムはないですよ!」と所属ジムに感謝した。

 古谷は、タイトルマッチの高い壁に何度も跳ね返されても、その度に立ち上がった。いつも黙々と練習して「何としてもチャンピオンになるんだ」という気迫が感じられ、その姿に胸を熱くさせられた。
2019年10月、中山佳祐戦
 キャリア18戦で一番記憶に残っている試合を聞かれた古谷は、元OPBF東洋太平洋フライ級王者の中山佳祐(ワタナベ→引退)との一戦を挙げた。「初めての後楽園ホールでの試合で、相手は元チャンピオン。誰もが負けると思っていたと思うが、勝つことができた。あの試合で自分が変わることができた」と、当時を振り返った。

 試合後の取材で「後楽園ホールで試合ができるのがうれしいし、そこで勝つことができて最高の気分」と満面の笑みを浮かべていた姿を覚えている。
「次のステージでも頑張る」
 現在は測量の仕事をしているが、今年8月から元日本バンタム級王者の安田幹男氏が店主を務める「炭火焼鳥 とり央」(大阪市福島区)に入社し、飲食業界で第二の人生に進む。「炭火焼鳥 とり央」は、食べログの「焼き鳥WEST 百名店2023」に選ばれており、絶品の焼き鳥を求めて連日満席の超人気店だ。

安田幹男氏が店主を務める「炭火焼鳥 とり央」で次の人生に進む

 六島ジムでチャンピオンになった安田氏だが、古谷とは在籍していた時期が被っておらず、面識はなかったが、「高山戦の帰りの新幹線で、武市さん(武市晃輔チーフトレーナー)から『引退したら何かやりたいことはあるのか?』と聞かれて、安田さんを紹介してもらった。会長も自分のことを心配してくれて、安田さんに連絡してくれたみたいで本当に感謝している」(古谷)。「これまで飲食関係の経験はないので不安だが、新しい挑戦。自分は、チャンピオンにはなれなかったが、ここまで来ることができた。ボクシングで培った経験を活かして、次のステージでも頑張りたい」と前を向いている。
おつかれさまでした
 最後に「自分のことをここまで育ててくれた六島ジム、スポンサーさん、ファン。妻と家族のおかげで、今の自分がある。本当にありがとうございました」と感謝の気持ちをしっかりと言葉にした。

 古谷は口数が多いタイプではなかったが、芯の強さを感じさせる、職人気質でいぶし銀の格好良さがある選手だった。試合後、勝利した時の笑顔が素敵だった。粘り強く、努力を惜しまない古谷。本当にお疲れさまでした。