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[JBC]2024.3.10

井岡一翔を戒告処分。平仲信明会長ライセンス無期限停止

井岡一翔(志成)

 JBC(日本ボクシングコミッション)は10日、WBA世界スーパーフライ級チャンピオンの井岡一翔(34=志成)を3月7日付けで、戒告処分としたことを発表。別件で、平仲ジムの平仲信明会長のプロモーターライセンスの無期限停止処分も通達した。

2022年12月31日

 一般財団法人日本ボクシングコミッション(以下「JBC」という)は、井岡一翔 (志成 ライセンス番号39865)を倫理規定第2条、制裁規定第2条①、第3条1②に基づき、令和6年3月7日付けにて戒告処分とする。

(理由)

 井岡一翔選手(以下「井岡」という)は、日本男子の世界戦最多勝利記録を有し、ボクシング界を代表するボクサーとして高い知名度を有し、その行動がボクシング界の信頼に小さくない影響を及ぼす立場にあり、常に品位を高めボクシング界の信頼を維持するよう務めることがとりわけ期待されている。

 にもかかわらず、2022年12月31日に大田区総合体育館で開催されたジョシュア・ フランコとの公式試合「WB0・WBA世界スーパーフライ級王座統一戦」(以下「本試合」と いいます。)の際に行われたドーピング検査において同人の尿検体からTHCの代謝物であるTHC-COOH (Carboxy-THC) が検出される結果が生じた(WADAの閾値150ng/mlには達していない)。このことはJBCルール第97条に抵触しないが、当該事実によって、同人が、本試合の開始前の不詳の時期に、不詳の場所において、不詳の方法により日本において所持が禁止されている大麻の成分であるTHCを摂取する行為又は受動的にTHCを摂取することになる状況を招く作為若しくは不作為をしたとの疑いを完全に払しょくできず、ボクシング界を代表するボクサーが違法に大麻を使用しているという疑念を生じさせた。

 よって、JBCは、井岡が、常に品位を高めボクシング界の信頼を維持するように努めなければならない義務を怠り、倫理規定第2条 に違反したと認める。

以上

一般財団法人日本ボクシングコミッション

サミュエル モセスと名乗った別人

 一般財団法人日本ボクシングコミッション(以下「JBC」という)は、平仲信明氏(プロモーター:ライセンス番号17290、以下「平仲氏」という)に対し下記の処分を決定した。

   記

1 処分 

プロモーターライセンスの停止の無期限停止処分

(制裁規程第2条第1号、2号、3号、5号、制裁規程3条2項5号

  JBCルール第35条第1項第13号)

2 処分の対象となる事実

(1) 平仲氏は2023年5月14日に北海道札幌市内で開催された興行(以下「本件興行」という。)において、ナイジェリアから選手及び関係者計5名(選手2名、マネージャー2名、トレーナー1名。以下、5名を総称して「招聘予定関係者5名」という。)を招聘することを企画しJBCへ届け出た。

(2) 開催にあたり平仲氏は、JBCに対し、招聘予定関係者5名が在留資格を「興行」とする査証(以下「興行ビザ」という。)を取得するために必要な在留資格認定証明書交付申請提出書類(保証書及び理由書)の作成を要請した。これを受け、JBCは、理事長を作成名義として在留資格認定証明書交付申請提出書類を作成し、諮問対象者へ交付した。平仲氏は、これら書類を福岡入国在留管理局那覇支局へ提出し、在留資格認定証明書を取得して、招聘予定関係者5名の興行ビザの発行の申請を第三者へ委託した。

(3) 本件興行に先立ち、平仲氏は、招聘予定関係者5名の興行ビザの発給の申請結果を確認せず、かつ、招聘予定関係者5名が日本に入国したことを確認しなかった。

(4) 本件興行に先立ち、平仲氏は、招聘予定関係者5名のうち3名分(選手2名、トレーナー1名)の航空券(羽田空港から札幌新千歳空港までの航空券)を手配し、外国人3名を飛行機へ搭乗させた。しかし、飛行機へ搭乗した3名は、いずれも、招聘予定関係者5名には含まれない別の外国人であった(以下、当該3名を「詐称外国人3名」という。)。

(5) 2023年5月13日、諮問対象者及び詐称外国人3名が、本件興行の前日に行われた公式計量に参加した。JBCが平仲氏に対し詐称外国人3名のパスポートの提示を求めたところ、平仲氏はこれを拒否した。同日、諮問対象者は、招聘予定関係者5名の興行ビザの発給状況及び詐称外国人3名の身元について、JBCに対し何らの報告をしないまま、JBCの職員に対し、翌日の本件興行を開催するよう強く要望した。

(6) 2023年5月14日の本件興行の当日、詐称外国人3名のうち2名が試合に参加し、いずれも1ラウンドでKO負けとなった。

(7) 本件興行の終了後、平仲氏は、JBCに対し、本件興行には招聘予定関係者3名が参加し、終了後に招聘予定関係者3名がナイジェリアへ帰国したとの虚偽の説明を繰り返し行った。

(8) 本件興行の終了後、招聘予定関係者5名は日本に入国しておらず、詐称外国人3名のうち2名が試合に出場したことが判明し、いわゆる「替え玉」による試合が行われたことが複数の報道機関により報道され、その結果、本件興行を巡る一連の問題が公知の事実となった。

(9)2023年8月、JBCは、本件興行における詐称外国人3名のうち2名が試合に出場した2試合につき、公式試合としての承認を取り消すことを決定した。

3 処分の理由

(1) 制裁規程第2条第1号

JBCルール第35条第1項第13号は、プロモーターの責務として、「招聘した外国人ボクサー、随行者および試合役員の国内滞在中の行動について責任を負うとともに、これら関係者の出入国の状況をJBCに対し速やかに報告すること」を定めている。

 平仲氏は、JBCに対し、招聘予定関係者5名の興行ビザの取得のために必要な書類の作成を申請し、JBCからその交付を受けたにもかかわらず、本件興行当日まで、興行ビザの発給の申請結果及び招聘予定関係者5名の出入国の状況を確認せず、JBCに対し、招聘予定関係者5名の出入国の状況を何ら報告しなかった。

 また、平仲氏は、本件興行の終了後、JBCに対し、本件興行には招聘予定関係者3名が参加し、終了後に招聘予定関係者計5名がナイジェリアへ帰国したとの虚偽の報告を行った

 これらの平仲氏の行為は、ルール第35条第1項第13号に違反するものであり、制裁規程第2条第1号が定める規律違反行為(「JBC試合ルールおよび同ルールにより制定された諸規則等に違反したとき」)に該当する。

(2) 制裁規程第2条第2号

 2023年5月13日、本件興行の前日に行われた公式計量において、JBCが、平仲氏に対し、前述のルール第35条第1項第13号が定めるプロモーターの責務の一環として、詐称外国人3名のパスポートの提示を求めたにもかかわらず、平仲氏は、正当な理由なく、詐称外国人3名のパスポートの提示を拒否し、詐称外国人3名の身元を何ら確認しないまま、翌日の本件興行の開催を強く要請した。

かかる平仲氏の行為は、制裁規程第2条第2号が定める規律違反行為(「JBCの指示命令に従わなかったとき」)に該当する。

(3) 制裁規程第2条第3号

 平仲氏は、招聘予定関係者5名の出入国状況及び詐称外国人3名の身元の確認を怠りながら、JBCに対し、本件興行の開催を強く要請した。

 その結果、本件興行において、本来出場すべき選手とは別人であり、かつ、ボクシング経験の有無すら不明である者が試合に出場するという前代未聞の事態が生じることとなった。

 複数の報道機関によって、本件興行を巡る一連の問題がいわゆる「替え玉」事件として広く報道され、このことが公知の事実となったことにより、JBCの管理体制や法令遵守の意識への世間からの信頼が大きく損なわれる状況に陥った。

 本件興行の一連の問題は、招聘予定関係者5名の出入国状況及び詐称外国人3名の身元確認を怠った平仲氏の行為に端を発するものであり、かかる平仲氏の行為は、制裁規程第2条第3号が定める規律違反行為(「ボクシング界の秩序、風紀を乱したとき」)に該当する。

(4) 制裁規程第2条第5号

 本件興行における詐称外国人3名のうち2名が試合に出場した2試合は、JBCにより公式試合としての承認を取り消される前は、JBCに承認を受けた公式試合として取り扱われていた。

 出場予定の選手とは別の者が試合に出場することは、試合の成立そのものを否定すべき不正行為であって、かかる不正行為がなされれば、試合の結果に影響が及ぶことが明らかである。

 そして、本件興行における不正行為は、平仲氏が、招聘予定関係者5名の出入国状況及び詐称外国人3名の身元確認を怠ったことにより行われたものである。

 かかる平仲氏の行為は、制裁規程第2条第5号が定める規律違反行為(「方法の如何を問わず公式試合の結果に影響を及ぼす恐れのある不正行為に関与したと認められるとき」)に該当する。

以上

2024年3月7日

一般財団法人日本ボクシングコミッション