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[帰国]2023.12.29

IBF新王者の吉田実代が凱旋!

吉田実代が帰国
 IBF(国際ボクシング連盟)女子バンタム級新チャンピオンの吉田実代(35)が29日、米国から帰国した。吉田は、日本時間の10日、米国カリフォルニア州でエバニー・ブリッジス(37=豪)に判定勝ちし、世界2階級制覇を達成。

 当初、予定していた挑戦者が怪我のため、出場ができなくなり代役として、試合まで2週間という短い期間の中でオファーを受けて、アップセットを起こした。
「こんなに早くチャンスが来るとは」
 取材に応じた吉田は、「まさかこんなに早く世界チャンピオンに返り咲けるとは思わなかった。まるでドラマのようです」と、アメリカンドリームに夢見心地のようだ。

 活動拠点を米国に移した際、プロモーターに対戦希望のリストアップを提出したが、エバニーとの対戦を一番望んだ。「人気がある選手だし、(エバニーは)私のスタイルと噛み合うと思っていた」。

迷うことなく受けた

 今年11月のシュレッター・メトカルフ(米)戦は判定負けを喫したが、内容的には五分以上だった。「良い試合をしても、完全に優勢じゃないと勝たせてもらえないのかな、と落ち込んでいた。しかし、プロモーターから『どっちが勝っていてもおかしくない試合だった。良い動きだったから、結果は気にしないで。近いうちにチャンスを作るから』と言ってもらえた。それから2週間後に世界戦の話がきた。大きなチャンスだったので、即決した」。
戦うシングルマザーが大金星!
 リング上でエバニーと対峙してみて、吉田の読みはズバリと当たった。「新しいトレーナーが彼女(エバニー)が得意な距離で戦わないように教えてくれた。これまでは、ジャブの緩急がなかったが、タッチするようにジャブを打つようになり、タッチする距離とロングレンジ。右に回ったりとアングルを変える時と3パターンを徹底した。もっと乱打戦になると思っていたが、相手が思ったより前に出てこなかった」。序盤から積極的に攻めて、何度も効かせたりと終始、優勢に試合を進めた。

 物心がついた時から、常に母の試合を見ている実衣菜ちゃん(8)は「今回は、ママが100%勝ったと思った」と笑顔を見せた。
「大舞台にもリラックスできた」
 これまでは力みが見られ、力を発揮できない試合もあった吉田だが、大舞台ですべてを出し切った。「超満員(収容人数2万人)だったが、その方がより楽しくできる。今、取り組んでいる、前に出るメキシカンスタイルがガッチリとハマって、リラックスしてできた。これまで日本で指導を受けていたことも『あっ、皆が言っていたのは、こういうことなんだ』と。新しいトレーナーに言われたことをそのまま出した」と納得の表情だった。
エバニーからも祝福された
 前回の試合で負けてから何かを変えようと、トレーナーを変えてTEAM Sosaに加入した。「ニューヨークに来て、自分がやりたいスタイルと少し違った。なんでも吸収しようと思っていたが、私がやりたいのは、メキシカンスタイル。わがままを言って米国まで来たので、ここで妥協したくないなと。教えてもらえるなら、最高峰のところで学びたいと思った」と、誰にも頼らず一人で英語を駆使しチームに入れてもらった。

新チームで世界に挑んだ

 エバニーからは試合前にSNSを通じて、次のようなメッセージが来たという。「2週間切った中で、試合を受けてくれてありがとう。私たちはウォーリア(戦士)だから絶対に良い試合になるよね。観客を沸かせる試合をしよう」。

 試合後も、エバニーはSNSで「私は負けたが、こんなに温かい気持ちになったのは初めて。自分のパフォーマンスには腹が立つが、戦ってみて吉田選手が謙虚で努力してきたのがわかった。リング上での娘を見て、2人がどれだけ頑張ってきたか、すぐにわかった。この勝利を心から喜んでほしい」と発信。エバニーのSNSの影響で、吉田のInstagramのフォロワーが一気に増えたという。
「どんどん強い相手と戦っていきたい」
 次戦は未定だというが、「プロモーターがどう動いてくれるか。WBAのチャンピオン(ニーナ・ヒューズ=ドイツ)もママさんボクサーで、スタイル的に噛み合うと思う。1位はメトカルフなので、もしかしたら再戦するかもしれないし、誰とやっても良い」。

 今回のファイトマネーが3万ドルだった。「挑戦者でこれだけもらえたのだから、チャンピオンになったからもっと上がる」。「これからも階級を問わず、どんどんベルトを増やしていきたい」と言葉に力を込めた。
 
 吉田は、祝勝会などに出席するため、1月17日(水)まで日本に滞在する。