5階級制覇の藤岡奈穂子が引退表明
アマチュア23戦20勝(10RSC)3敗を経て、2009年にデビューした藤岡は、強烈なパンチ力とテクニックで6戦目で世界王座に就くと、その後も圧倒的な強さで、数々のベルトを獲得。2017年12月には世界5階級制覇を達成。女子年間最優秀選手賞(MVP)も5度受賞し、長きにわたって日本女子ボクシング界を牽引した。昨年4月に行われた、米国テキサス州でマーレン・エスパルザ(米)とのWBA・WBC女子世界フライ級王座統一戦がラストファイトとなった。
会見の席で藤岡は「昨年4月の試合から1年経ち、自分としてはやり切ったので、選手としては卒業します。前回の試合直後は引退しようと決めていたが、ゴールデンボーイプロモーションの社長から『また、米国の試合に呼ぶから』と言われて、チャンスがあるならと心が揺らぎ、再起に向けて動き出したが、『いつまでも待っていられない』と期限を設けた。昨年7月に米国に長期合宿をして、その中で試合のオファーもあったが、条件が合わなかった。1年経って、引き際だと引退を決意した」と、引退を決意するまでの1年を振り返った。
2009年9月15日のプロデビュー戦以来、23戦19勝(7KO)3敗1分の戦績を残した。印象に残っているのは2試合。
一つ目は、東日本大震災の後、2011年5月8日にチャンピオンのアナベル・オルティス(メキシコ)から8ラウンド終了後、TKO勝利に持ち込みタイトル奪取に成功した、WBC女子世界ミニマム級タイトルマッチを挙げた。
もう一つは、日本人最強決定戦との触れ込みで注目を集めた、2013年11月13日の山口直子(白井・具志堅)戦。この試合で、チャンピオンの山口から判定勝利を収めた藤岡は、WBA世界スーパーフライ級タイトル獲得と同時に、世界2階級制覇を達成した。
国内のみならず、世界の女子ボクシング界の第一人者として、牽引してきた藤岡は「5階級制覇したことで、女子選手でもチャレンジしたらできるんだと証明できた。しかし、海外進出という面では、まだまだこれから。自分が米国に行って挑戦できたことで道を作ることはできたと思うが、海外選手のレベルが上がっているので、追いつき追い越せで、女子選手のレベルアップに期待したい。晝田瑞希(三迫)は華があるし、これからの日本女子ボクシング界を引っ張っていく存在になる。ただ、晝田選手一人だけでなく、あと3〜4人出てきてほしい」と現役選手達にエールを贈った。
今後の活動に関しては、具体的には決まっていないとしながらも「地元(宮城県)でイベントをしたり、後輩に何かを伝えられたら」と意欲的な姿勢を示した。
竹原慎二会長は「お手本となり、ジムを引っ張ってくれて、これまでよく頑張ってくれた」とレジェンドを労った。
9月25日に後楽園ホールで行われる一力ジム主催の興行で引退式が行われる。